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「提言!これからの日本観光」 「令和」2年度を前に

2020年3月16日
編集部:木下 裕斗

2020年3月16日(月) 配信

 2019年の訪日外国人旅行者数は、3189万人で、外国人旅行者旅行消費額は4・8兆円だったと発表された。この実績と過去の施策を検証し、反省したうえで、今後の観光の方向を考え、前進を期すべきと考えられる。観光施策のほとんどが事業年度単位となっているなか、4月は目前だ。「令和2年度」では令和の観光推進の基盤となる次の2点について、適確な施策策定と実行が出発点となると考えられる。

 第1は「災害対策」である。とくに、多くの学者が高い確率で発生するという大地震と津波への対策の確立である。ようやく近年、自治体や経済団体などで本格的な検討、取り組みが見られるようになってきたが、まだ充分とは言えない。原因は観光シーズンの大災害の経験が乏しく、先例がないことにもある。

 また、当面の最大危機とも言える南海トラフ大地震は最近まで、誰もが予知可能と思い、それを前提に国と自治体が具体的対策を考え、詳細な避難誘導計画なども策定してきた。しかし、急に予知不能となり、対策の作り直しを迫られ、観光における災害対策の確立の遅れにつながった。各地域は近年の大地震を踏まえ、観光客の命を守る前提で、避難、誘導、食事の提供を含めた収容対策の練り直しを始めた。なかでも観光客の帰宅困難者対策は大地震のほか、異常気象でも発生するので、対策の早期確立に努めなければならない。

 第2に観光「統計数値」の整備である。観光は観光意思の有無に左右されるので、調査、把握が難しいことは事実である。しかし、統計手法、統計集計技術は近年急発達し、AI(人工知能)とICT技術の進歩も考えれば、観光統計をとる環境は整ってきた。もちろん、観光は観光意思の有無に左右されるため、観光統計には統計的手法を駆使して、一定の仮説の設定も必要となる。国も現在、一定の推計基準を検討のうえ、観光統計の整備に努めている。

 しかし、今もって、邦人の国内観光客総数さえ分からないのは残念なことだ。それは一部の自治体が国の統計基準による統計を行っていないか、未集計として数値を公表していないため、合計数値が示せていない。統計は国全体の数値把握が必須であり、国が定めた手法に応じない自治体があるのは大変理解に苦しむ。国の観光数値目標も2割弱の訪日客に関わるものが中心とならざるを得ず、国内観光客の8割強を占める邦人観光客は目標値が設定できない。

 このため一部地域では、訪日客の増加だけに国の施策の重点が置かれているとの誤解をする原因になっていると思う。観光統計の整備こそ、「観光立国」の羅針盤を確立することに他ならない。

 「オリンピック年」という「観光立国」に向かって節目となる新事業年度が出発する。そのための基盤ともいうべきは「観光安全」への信用確立と観光施策の指針「観光統計」整備への格段の前進を期待し、努力しなければならないと痛感する次第である。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏

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