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温泉地 国立公園 ON・ガスイベントで盛り上げる カギは相互交流と人材育成

2020年3月24日(火) 配信

ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 小川正人理事長(3月2日インタビュー)

 2016年、「ガストロノミーツーリズム」に温泉を組み合わせた新たな試みが日本で生まれた。19年には、全国26カ所でウォーキングイベントが行われ、延べ約6500人が参加。今年2月には海外初のイベントが台湾で開かれ、現地でも好評を博した。

 同ツーリズムの推進役「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」の小川正人理事長(ANA総合研究所会長)に「温泉地と国立公園の活性化」、「国内の次の展開」、「イベントの国際化」を軸に話を聞いた。

 その土地ならではの食を歩きながら楽しみ、歴史や文化を知る旅を、ガストロノミーツーリズムという。ONSEN・ガストロノミーツーリズムは、これに「温泉」を組み合わせた新しい旅だ。

 設立から4年目を迎えるONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構は2月15日、台湾・台中でウォーキングイベントを開催した。参加者は「日本統治時代の建築遺産を巡る」をテーマにしたガイドの解説を聞きながら、約6・5㌔の道のりを台湾のグルメも堪能しながら歩いた。

台湾のまちを歩く参加者

 推進機構にとっての初の海外イベントとなったが、現地でも高く評価され、台湾版の「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」を設立する方向で、現地関係者と議論を始める予定だ。また、現地では来年から、台湾政府が美しい景色の地域を選んで制定した国家風景区で順にイベントを開催する方向で話し合いが進んでいる。推進機構側でも、台湾観光協会に対し、特別会員としての参画を要請することを検討している。

 ONSEN・ガストロノミーイベント(ON・ガスイベント)の海外展開は、推進機構の今年の目玉である「海外展開の推進」の一環。台湾に加え、ガストロノミーウォーキングが盛んなフランス北部のアルザスでは、現地で行われるイベントに参加するカタチでイベントの実施を予定する。「海外でON・ガスイベントを展開する際は、相互交流が前提になる」と小川理事長。「相互交流というカタチならば、互いの国、地域に人を動かす流れができる。国内の場合、各温泉地に国内外から多くの人が集まることで活性化につなげられる」と説明した。

 2つ目の目玉は、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)でのイベント開催。来年4月1日から9月30日に行われる東北デスティネーションキャンペーン(東北DC)に向け各県の魅力を発信するのが狙い。特別列車をクラブツーリズム、びゅうトラベルと一緒に運行するなど、全国から東北に人を集める仕掛けを施す。

 各地で開催されるイベントには、観光業界以外からも熱い視線が向けられている。

 機構は3つ目の目玉として、こうした異業種とのコラボレーションイベントを展開する。第1弾として、愛媛県今治市のプロサッカーチーム「FC今治」との合同イベントを開催予定。同チームのホームゲーム前日にイベントを開き、参加者には翌日の試合観戦も楽しんでもらう計画で、イベントには、所属選手の一部も参加する方向で準備を進めている。

 これら3つの目玉に加え、新しい形態のON・ガスイベント、長期滞在型イベントもスタートする。新しい形態のON・ガスイベントは、会員企業のぐるなびとともに、銭湯を舞台に展開する。名称は、「SENTO・ガストロノミーホッピング(仮)」。参加者は銭湯に浸かったのちに、オリジナルの浴衣に着替え、周辺のレストランを巡る。

 一方、長期滞在型では、会員企業のクラブツーリズムが展開する旅行商品「暮らすような旅」の中にイベントを組み込む考えを示す。
 同旅行商品は、1、2カ所に3連泊以上する長期滞在型の旅シリーズ。これにON・ガスイベントを組み合わせ、温泉地の経済活動を活発にする仕掛けを構築することが狙いだ。

環境省と連携

 推進機構は今年2月4日、東京都内で交流会を開き、より広く活動をPRするとともに国立公園の活性化をはかるため、環境省と連携し、体制を強化すると発表した。

 今後どのようなカタチで活動を展開するかは現在検討中だが、国立公園と全国の温泉地を活性化させるプロジェクトを展開することが、「観光立国」を目指す日本の国益に適うと考えている。

温泉地の課題解決へ

 参加者は2016年の約300人から19年は約6500人と大幅に増え、開催地も年々増加。今年はすでに34カ所での開催が決定している。

大自然の中を歩くのも魅力

 推進機構としては年々参加者が増え、新規開催地も増える今、共通の主催マニュアルを作る構想を抱いている。

 「地域が自分たちで実行委員会を立ち上げ、ゼロからイベントを作り上げているので、地域の負担が大きくなっている。マニュアルを作ることで、負担を軽くし、より地域色の濃いイベントに磨き上げてもらうことが狙い。細かなことは定めず、ある程度の共通のルールを決めるにとどめたものにする」と、小川理事長は概要を説明する。

地元のグルメでおもてなし

 推進機構の使命として「温泉地の活性化」にさらに注力する姿勢も示した。春と秋の2回イベント開催地で、温泉地や地域人材の育成などをテーマに議論し合う「温泉・国立公園活性化大学校(仮)」のようなフォーラムも開催したい考えだ。

 そのうえで、「地域の現状をイベントを通じて細部まで見てきたから気づいた課題もある。例えば、旅館の修繕費や廃業した場合の解体費など、館の維持、管理には多額の費用負担が必要だが、これを1施設で賄うのは難しい。温泉地全体で積み立てなど経理を共通化するシステムの構築が有効だと思う」と持論を展開。「地域それぞれがイベントを磨き上げ、参加者の満足度の高いモノに仕上がってきている今が、行動を起こす最適なタイミング」と力を込めた。

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