JATA、定例会見で支援制度の利用を呼び掛け 企業存続に「制度をフル活用し、今は生き延びて」
2020年3月30日(月) 配信
日本旅行業協会(JATA)は3月26日(木)、東京・霞ヶ関の本部で定例会見を開き、23日(月)に首相官邸で開かれた「新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」でのJATAの発言内容ついて報告した。
新型コロナ禍で大きな打撃を受けている旅行業への経営継続支援策強化などを要望。越智良典理事・事務局長は会員に対し、「雇用調整助成金など、支援制度が整備され始めた。(企業存続に向け)制度をフルに活用し、今はしぶとく生き延びてほしい」と呼び掛けた。
ヒアリングの出席者は、JATA副会長で東武トップツアーズ社長の坂巻伸昭氏のほか、定期航空協会会長で全日本空輸(ANA)社長の平子裕志氏や日本旅館協会会長で北原会長の北原茂樹氏ら、観光業や運輸、宿泊関連の関係者。
越智氏によると、ヒアリングでは観光庁が集計している主要旅行業者(50社)の旅行取扱状況から、今年3月と4月の取扱額がそれぞれ前年同月比約7割減と落ち込み、「毎月3000億円の仕事が消えた状態」であることを報告。これに伴い、国内での旅行消費額も毎月1.5兆円が失われている状況にあると伝えた。
これらを踏まえ、経営継続支援の強化として、雇用調整助成金の助成率をリーマンショック時と同様レベルの大企業が4分の3、中小企業が10分の9に引き上げることを要望した。支給限度日数は200日への延長を申し入れた。
越智氏は「これまでも旅行業界は助成金などの申請をする企業が他業種より少ないのでは」と述べ、制度の活用が企業存続の手段の1つだとした。
また、今月17、18日に与党に提出した要望に沿ったかたちで、旅行業界が自主的に感染防止策を講じることを条件に旅行やイベント自粛要請の緩和を求めた。これに対して政府は「いまは『都市封鎖』にならないことが大事。専門家の意見を聞きながら検討する」との回答があったという。
「段階を踏んでいかなければならない。(完全な対策でなく旅行やイベントを)実施して、感染者が発生したときには大きなリスクが伴う。我われの対策はプロとしてどこまで共有できるか、観光業界に問われている」(越智氏)と述べた。
ほかにも、修学旅行を中止でなく延期して実施し、学校側にキャンセル料が発生した場合の財政支援を求めた。
旅行需要回復キャンペーンは、毎月1.5兆円とされる旅行需要の消失を取り戻すような大規模キャンペーンを要望。越智氏は「規模は100億円単位。数兆円単位の効果をあげたい。まずは国内旅行キャンペーンから。精算のことを考慮し、シンプルで分かりやすい仕組みにする」との考えを示した。
国際交流の再開には、出国時の検温や健康チェックなどの国際的な仕組みづくりについて要望した。
越智氏は、旅行業界の現状を裏付けるデータとして、JATA会員1193社を対象に行ったアンケート結果(3月25日午後6時時点)を公表した。新型コロナウイルスなどが要因で「経営困難におちいっているか」とたずねたところ、回答があった266社のうち「とても厳しい(35.3%)」「厳しい(33.5%)」と回答した会員は、合わせて約7割にのぼったことを明らかにした。
「現場から『非常に厳しい』という声が上がっている。2週間前の声より悪化している。経験したことない未知のゾーンに入ってきている」と危機感を示した。
一方で、「1つの目途として、9月までには何とかしたい」と述べ、9月に東京で開催の商談会について言及した。「終息後の仕掛けについて話し合うのに、良いタイミングなのでは。第1段階として東京の商談会の存在はとても大きい」との考えを示した。申し込みは6月まで延長する。
10月29日(木)~11月1日(日)に沖縄で開催の「ツーリズムEXPOジャパン2020 リゾート展in沖縄」については、「沖縄の起爆剤になるための話し合いを行っている。観光大臣会合についても、反転攻勢の『決意表明の場』として考えている。世界に先駆けて、こういう動きをするのも大事だと思う」と述べた。