〈旬刊旅行新聞4月11号コラム〉緊急事態宣言下で 皆が総力で新型コロナと戦っている
2020年4月10日(金) 配信
安倍晋三首相は4月7日、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県に緊急事態宣言を発令した。5月6日までの1カ月間、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、改めて国民に外出自粛を要請したが、海外のような都市封鎖ではないことも強調した。
政府と各都府県との間で、休業対象の業種に対する考え方にズレが生じるなどの問題も表出している。経済活動や社会機能の維持と、新型コロナウイルスの感染拡大防止は相反するため、現場では混乱も起こっている。医療現場の関係者や専門家は、医療崩壊の危機感を訴える。飲食業や娯楽産業などは、補償のないまま休業対象になると、死活問題である。もちろん観光産業の厳しさは言うまでもない。
安倍首相が「日本経済は戦後最大の危機」と語る現況で、誰もが新型コロナウイルスの感染リスクに晒されるなか、企業存続や、雇用の維持、社会的な使命に身を捧げなければならない状態にある。ストレスや不安で、心身ともに疲労している。
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医療のキャパシティに限界がある県や市、離島の住民を守るために、それぞれの首長が外部からの入域を自粛するように要請する動きも出てきている。
沖縄県の玉城デニー知事は4月8日、県外から沖縄県への旅行などを含む渡航の自粛を求めた。観光業の占めるウエイトが高い沖縄県にとっては覚悟を伴う決断である。県民向けに県内宿泊施設を利用するプランも充実する沖縄だけに、厳しい難局を乗り越えてほしいと思う。全国の観光業界の方々も似たような環境だ。
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私が生活をする神奈川県も、仕事場のある東京都も、緊急事態宣言下にある。
通勤電車はテレワークも進んでいることもあり、平日の朝にも関わらず、乗客はまばらである。新型コロナウイルスの感染防止のために、車窓を開けているために、風が吹くたびにガタガタと窓が揺れる音がする。早鐘を打っていた首都・東京の経済の鼓動が少しずつ間遠に、小さくなっていくのを感じている。乗客は皆マスクをしている。空間は沈黙が勝る。スマートフォンに目を落とす乗客の表情は読み取りづらい。
東日本大震災が発生した2011年3月11日以降も、通勤電車は計画停電などもあり、照明の消えた暗い電車で、不安になりながら通勤した記憶が今も甦って来る。けれど、あの時とは違う。新型コロナウイルスに打ち勝つには、また、お互いを助けるには「家を一歩も出ずにいること」が求められる。困った人や、観光施設を助けるために訪れることもできない。もどかしさを感じてしまう。
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政府は、緊急経済対策として総額108兆円規模での支援策を打ち出した。雇用調整助成金の助成率の引き上げや、収入源企業は税金や社会保険料を1年間猶予などの対策を行うという。今は、旅行会社も旅館・ホテルも生き延びることが最優先だ。次の段階として、官民挙げた観光・運輸・飲食・イベント支援キャンペーンなどに8・5兆円という莫大な予算で後押しする案も出ている。
文部科学省はスーパーコンピューター「富岳」を活用して、新型コロナウイルスの治療薬開発につなげる研究を進めると発表した。皆が総力で戦っているのだ。
(編集長・増田 剛)