「観光革命」地球規模の構造的変化(222) コロナ禍による危機の連鎖
2020年5月5日(火) 配信
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)は4月に入ってから欧米諸国を中心に爆発的に拡大している。世界全体の感染者数は3月26日に50万人を超えた後、4月2日に100万人、9日に150万人、15日に200万人、21日に250万人と、ほぼ1週間ごとに50万人が上積みされ拡大している。
とくに米国は世界最多の82万人超の感染者が確認され、死者は4万5千人超に達している。米国で最も深刻なニューヨーク州は4月21日までに感染者が約25万人、死者が約1万5千人を記録。州政府は3月22日に外出制限の行政命令を発令。厳しい外出制限と共に、生活必須業種を除いて原則在宅勤務が義務付けられ、違反企業には罰金が科される。
日本では4月21日時点で感染者は約1万2000人、死者は312人だが、安倍首相は4月7日に緊急事態宣言を発令した。対象地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、期間は5月6日まで。首相は生活維持に必要な場合を除く外出を自粛し、人との接触を7、8割減らすように呼び掛けた。7都府県の知事は私権制限を含む法的措置が可能になり、外出やイベント自粛要請、学校や映画館などの使用停止が行われている。
コロナ禍は目に見えないウイルスが原因なので、万人に生存危機・健康危機をもたらす。そのために感染拡大を抑え込むことは不可欠で、外出制限、徹底的な検査、データに基づく治療法とワクチンの開発が必要だ。世界各国で緊急事態宣言が発せられ、外出制限や営業制限や就業制限などの実施によって、世界的に経済危機・生活危機が生じている。
日本でも政府による緊急事態宣言後にコロナ感染拡大の抑制のために外出自粛やイベント自粛などが常態化し、その結果として広範囲に及ぶ経済危機が生じている。今後は企業倒産や従業者解雇などによる生活破綻が顕在化する。政府は緊急経済対策のために巨額の予算投入をはかっているが、コロナ禍による経済危機・生活危機の解消は容易でない。
「経済は命があれば取り戻せる。病気や死という痛みを最小限に抑えるために『経済の痛み』を受け入れるべきだ」という意見もあるが、経済の痛みをできるかぎり和らげるためのさまざまな公的支援策が不可欠である。
北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。