「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(4月号)」
2020年5月2日(土)配信
〈巻頭言〉
新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、3月16日からフランス全土に下された外出禁止令は、4月に入った現在も続いています。本誌編集部は発令当初より全員が在宅勤務にシフト。すべての作業を遠隔で進めています。そんななか、4月号の発行に関しては、当分事態の収束が見込めないと判断し、99号にして初めて紙版を断念。デジタル版のみでの出版となりました。事情をご理解くださっている広告主の皆様には、スタッフ一同心より感謝しています。この最新号の特集では、日本在住40年の社会学者ミュリエル・ジョリヴェ氏に、彼女が見た日本社会の移り変わりと、日本人の結婚観の変化などについてお話しいただきました。文化面では、漫画家つくみずのデビュー作「少女終末旅行」を紹介。旅ページでは情緒あふれる萩市を訪れています。
(編集長 クロード・ルブラン)
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□特集 「ミュリエル・ジョリヴェの日本」
過去50年の間に大きく様変わりした日本。驚異の経済成長を遂げた後のバブル崩壊、そして景気の長期低迷からの脱却を模索し続ける現在。そんな日本に、フランス人社会学者ミュリエル・ジョリヴェ氏は1973年に移り住み、今日まで社会の移り変わりを見てきた。長く上智大学で教鞭を取り、日本、フランス両国で多くの書籍を出版、いわゆる日仏文化比較のエキスパートだ。昨年フランスでElytis出版から出された最新刊(仏語タイトル仮訳:「普通の日本について」)では、現代日本社会で見られる人々の動向を「子なし族」「老老介護」というさまざまな事例で紹介。今回の特集でジョリヴェ氏に、この書籍の内容を軸に話を聞いた。インタビュー冒頭の「(若者の)XX離れ」という言葉の意味するところについての質問から、話の流れは「結婚離れ」へ。その傾向を分析していくと、そこには「結婚適齢期」という考え、女性の社会的立場、子供を育てる経済的余裕のなさが物語る社会の貧困化などが見えてくる。次に、書籍の中の「日本の女性は男性よりも幸福である」という記述についても意見を求めた。膨大な資料に基づいた彼女の見解は非常に興味深い。
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□〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉コロナから書店を守る
来月、創刊10周年を迎える本誌は、新型コロナウイルスの影響で広告収入が見込めない状況ながら、第100号を紙版発行するという苦渋の決断をしました。読書好きで知られるフランス人の大半が電子書籍よりも印刷された文字を選び、本を「所有」することを好みます。この文化が本誌の「紙」へのこだわりに根差しているように、国内にあるおよそ3300軒の独立系書店も厳選した書物を実店舗で提供し、そのこだわりを必要とする人々に支えられています。ところが、コロナ感染対策により街の本屋が3月16日から営業停止施設の対象になり、Amazonに注文が殺到。小売店は深刻な倒産の危機に直面しています。文化省は2日後、書店に対し5億8000万円の補償金の支払い(1店あたり約15万円)を発表しましたが、市民からは早々に営業再開を求める声が上がり、ルメール経済・財務大臣も「検討」を表明。多くの出版社は外出禁止令が解除されるまで新刊の発売を見合わせることで、零細書店をアシストしています。それでも危機的状況は回避できず、4月に入り、フランス書店組合は支援基金の設立を呼び掛けています。身近な文化のシンボル、書店を守り、本を守る戦いは続きます。
フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉