JATAの緊急Webセミナー【第1部-2】新型コロナ禍の経営術と雇用調整助成金について(JATA理事の原優二氏)
2020年5月11日(月) 配信
日本旅行業協会(JATA)は4月27日(月)、緊急Webセミナー「新型コロナウィルスと日本の観光業」の第1部を行った。JATAの越智良典理事・事務局長に続いて、2人目の講師は、風の旅行社社長でJATA理事、トラベル懇話会会長の原優二氏が登壇。経営者を対象に「新型コロナ禍を乗り切るための経営術~雇用調整助成金の肝は何か?~」について語った(雇用調整助成金の適用条件などは4月27日時点での情報)。
原氏は新型コロナウイルス感染拡大が経営に及ぼす影響について、「一番の武器は雇用調整助成金」と強調。そのうえで「休業手当の支給率をどうするかが雇用調整助成金の肝になる」との考えを示した。また、「長期戦になると、休業手当の支払率を100%に保つのは難しい。平均賃金の単価計算には2通りあるのを覚えておいてほしい」と述べた。
雇用調整助成金には休業、教育訓練、出向の3種類あるとし、今回は主に「休業」について説明を行った。雇用調整助成金を受けるには、企業側は労働組合や従業員の中から労働者代表を選出して休業協定を結ぶことから始まる。
だが、休業協定書に記載される休業手当の支払率について原氏は、休業実施月ごとに変更が可能となるよう「毎月協定を結ぶようにしておくことが重要」と述べた。また、「経営者が一方的に変更するのではなく、従業員ときちんと話をすることが大切」と話す。
さらに、休業が長期化すると「休業手当の支払率100%維持は難しくなる」と想定。その場合、支払率は「上限8330円を下回らない範囲で下げること」、「労働基準法上の休業手当は平均賃金の60%以上支給する規定がある」と説明した。だが「給料支払いをしていくうえで、非常に厳しいという状況を迎えた時、平均賃金の単価計算には2通りあるのを覚えておいてほしい」と述べた。
【平均賃金の単価計算方法】
イ)所定労働日で計算する方法
例:月収30万円の場合 30万円÷所定労働日20日=1万5000円
ロ)労基法12条の暦日割り
例:月収30万円の場合 30万円÷暦日数30日=1万円
平均賃金の60%以上を支払う際に、所定労働日か暦日割りかで賃金単価が大きく変わってくる。歴日割りのほうが安くなるとし、「合法的ではあるが、従業員とどこまで話ができるか、どこまで給料をカットしながら持ち堪えるかを話し合っていく必要がある」と提案した。
雇用調整助成金の申請については、「最初はとっつきにくいと思うかもしれないが、1回目の申請のあとは毎月繰り返しの作業」と述べ、多くの企業に雇用調整助成金を受けるよう呼び掛けた。
また、提出書類に必要な売上減少の証明について「ハローワークでは、会社のパソコンデータから該当月の前年と今年の売上明細を作成すれば良いと言っていた」と紹介した。
今回のコロナ禍について原氏は「企業活動の前提としてあり得ない危機」としたうえで、「経営のリスクマネジメントは、最悪の状態を想定しながら進んで行くことが最も大切」とアドバイスした。
JATAの緊急Webセミナーは、4月27・28日の2日間にわたって開催されたが、定員を大幅に超える視聴希望者がいたため、5月1日に再配信も行われた。