「観光革命」地球規模の構造的変化(223) Stay HomeからGo To へ
2020年5月31日(日) 配信
政府は4月7日(火)に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大防止のために緊急事態宣言を公表し、それ以後「Stay Home」が合言葉になり、不要不急の外出が自粛された。5月4日(月)には厚生労働省が「新しい生活様式」を公表し、「3密回避」、「帰省や旅行は控えめに、出張はやむを得ない場合に」が強調されると共に、テレワーク・オンライン会議などが推奨された。従来型の観光・旅行は控えることが奨励され、観光業界は大きなダメージを被っている。
5月25日に政府は緊急事態宣言の全面解除を公表し、経済活動の再開へと方向転換をはかっている。政府はコロナ収束を前提に、観光などの大規模振興策「Go To キャンペーン」を4月7日(火)に閣議決定した。緊急経済対策として、国内の人の流れやにぎわいを創出し、地域活性化をはかる官民一体のキャンペーンで、経済産業省に1兆6794億円の超巨額予算を計上。
キャンペーン(以下、C)は①Go To Travel C(旅行商品購入者に代金の2分の1相当額のクーポンを付与、1人当たり最大1泊2万円まで)、②Go To Eat C(予約サイト利用者に上限1千円のポイント付与)、③Go To Event C(チケット購入額の2割引クーポン付与)、④Go To 商店街C(イベント開催・プロモーション実施)。予算総額の内、旅行分野が8割を占め、延べ5千万人の宿泊需要が見込まれる。
コロナ流行の長期化は不可避で、拙速に大規模キャンペーンを行うのはリスクが大きい。先ずは現在苦境で悩んでいるさまざまな企業や働き手に対する事業継続や雇用維持のための諸対策を強力に進めるべきだ。雇用調整助成金の拡大、無利子・無担保融資、各種の現金給付、公租公課の減免措置など為すべきことが数多くある。
日本では21世紀に入ってから大規模災害や感染症などが頻発し、その度ごとに観光産業は大ダメージを受け、公的支援を受けている。中小企業庁は東日本大震災による厳しい経験を踏まえて、事業継続計画(BCP)の策定運用を奨励。災害などの緊急事態が発生した時、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧をはかるための計画だ。観光・旅行分野の中小企業も本格的にBCPの策定運用をはかる必要がある。
北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。