宿泊業倒産件数、6年ぶりに2ケタ台へ 需要回復は見通し立たず 東京商工リサーチ調べ
2020年6月9日(火) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2020年5月の宿泊業倒産は10件(前年同月は4件)となった。5月としては14年以来、6年ぶりに2ケタ台となり、3カ月連続で前年同月を上回った。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は解除されたものの、宿泊需要の回復時期は未だ見通しが立たない。同社は「6月以降にも息切れ倒産の可能性がある」と注意を促した。
□宿泊業・旅行業の倒産状況
宿泊業の5月の負債総額は82億1500万円(前年同月は9億4000万円)と、4カ月連続で前年同月を上回った。負債10億円以上の倒産が3件発生し、全体の値を押し上げる結果となった。
原因別では「販売不振」が7件、「既往のシワ寄せ」が2件。
形態別では破産9件、特別清算1件。
地区別では九州と中部が各3件、東北、近畿、中国、四国が各1件となった。
おもな倒産事例として、宿泊施設のほか、ブライダルやレストランとしても人気を集めた国際ホテル(青森県青森市)が、5月25日(月)に破産を申請。負債総額は約16億円となった。元々の借入金が負担となっていたほか、コロナの感染拡大の影響で宴会や宿泊のキャンセルが相次ぎ、売上が激減していた。
長野県佐久市の天然温泉「佐久一萬里温泉・ホテルゴールデンセンチュリー」を経営していたホテル一萬里(長野県佐久市)は、5月22日(金)に破産開始決定を受ける。負債総額は35億2000万円。ピーク時は17億9900万円の売上高を計上したものの、過去の設備投資負担が原因で赤字が続いていた。新型コロナがきっかけとなり、資金繰りの目途が立たなくなった。
一方、旅行業の5月の倒産は19年10月以来、7か月ぶりに発生がなかった。また、19年12月以来、5カ月ぶりに前年同月(2件)を下回った。
今年1~5月の累計件数は13件で、前年並みで推移した。
5月は企業全体の倒産件数も314件(前年同月比54・8%減)で、月次では1964年(282件)に次ぐ、56年ぶりの記録的な低水準となった。
同社は「新型コロナに伴う緊急事態宣言で、裁判所や弁護士の業務縮小や資金繰り支援などが倒産件数を抑制した可能性がある」としたが、一方で法的手続きを取らない廃業を選択した可能性もあると指摘。「今後は倒産のみならず休廃業の動向にも注目が集まる」との見方を示した。