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「提言!これからの日本観光」 “ふだん着”の観光を

2020年6月14日
編集部:木下 裕斗

2020年6月14日(日) 配信

 昨年までずっと右上がりで伸び続けてきた訪日客が新型肺炎コロナウイルスの感染拡大、国際情勢の影響もあって、まず近隣諸国からの来日客が急減、さらに長期低迷さえ予想されるに至って、観光地には憂色が漂ってきた。

 しかし、今のようなマイナス条件はいずれ収束に向かうはずである。延期となったオリンピックの会期も決まったため、後半の挽回も期待され、すみやかに復元させる努力が求められている。

 ところで今考えてみると、これまでの上向き状況のなかで、訪日客の動きにいくつかの注目すべき新しい課題が出てきたように思う。その分析から、今後の観光の方向を考えてみたい。

 まず、外国人客の日本の観光への志向変化である。これまで、我われ受入側があまり予想しなかった地域ないし地点で、訪日客の急増が各地で見られたことだ。例えば、京都では市民の台所とされる日常食品市場に外国人客が大挙して訪れるようになった。また、東京でも卸売市場のせり市見学など外国人客がこれまでほとんど訪れなかったようなところでも、早朝から交通整理が必要なほど観光客が来るなどした例がある。富士山の展望スポットには、これまでの定番と違う角度から山容が見える山梨県側の仏塔をバックにした場所に、訪日客の訪問が相次いだ例もある。受入態勢が充分なかったところでは苦労している例も多かった。

 最近の観光団体のアンケートによると、訪日客が日本で最も期待していることは、「市民の日常生活に触れること」で、有名観光地訪問よりも高い志向だった。市民の日常に直接触れる市場などに訪日客が集中するのも同じ理由と考えられる。

 今ひとつの傾向は、訪日客、とくに近隣諸国の人々は来日前に日本のことを勉強し、書物、雑誌なども多く読み込んだうえで訪れる人も多いことだ。例えば有名アニメ作家の生地にオープンしたテーマパークは、小規模だが、訪日客が多数訪れるようになり、邦人も訪れるようになった。筆者もはずかしながら、外国人が多く訪れる場所ということで、その存在を知った1人である。

 このような例から訪日客の日本の観光への志向ないし期待が従来の傾向とはかなり異なってきている点があることに気付く。高級なリゾートもさることながら、何気ない自然な市民の営み、くらしに接してもらう努力が必要ではないか。また、その受入態勢の再構築も急を要すると考えられる。ホームステイなどの紹介と登録、予約のシステムや日本のまち、村に溶け込んだ民宿の造成、農漁村での作業体験などの提案なども望まれる。そして、静かな地方の農漁村の佇まいをすぐに観光資源化するような努力も必要と思う。

 訪日客の多くは日本の日常の自然な姿に接したい。いわばヨソユキの飾られた華やかな観光だけではなく、“ふだん着”の観光、もてなしの心をもった自然体が訪日客に求められていると思う。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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