No.362 滞在型の観光地へ - 「地域の中に旅館がある」考え方
滞在型の観光地へ
「地域の中に旅館がある」考え方
2013年に訪日外客数1000万人を達成し、国は2000万人を目指す構えだが、さまざまな課題が残されている。とくに、日本人だけでなく外国人旅行者にも人気の高い温泉旅館は「1泊2食型」が中心で、滞在型観光客への対応が十分とはいえない。まちづくりや地域活性化など幅広く研究を行っている石井建築事務所名誉会長で、国際観光施設協会会長の中山庚一郎氏に、滞在型の観光地への変革に必要な考え方や、現在大きな議論となっているエネルギー問題についても聞いた。
【増田 剛】
料理部門をレストランに、宿泊客が他の旅館でも食事を
――日本の宿泊施設や観光地の現状について。
海外のさまざまな宿泊施設に泊まったり、観光地を訪れて感じるのは、海外の宿泊施設では、料理も提供しますが、宿泊客がそこで食事をするとは限らない。街を歩き、自分で食事をする場所を探します。つまり、海外では街や地域の親切な人たちも一つの商品となっているのに、日本では旅館の「1泊2食型プラン」が旅行という商品の大部分を占めています。
今後、日本の観光産業も国際マーケットで競争をしていかなければなりませんが、一つの旅館の施設と料理、お風呂だけで完結したプランを売っている状況では、国際マーケットに入っていくことは難しいと思っています。そして、現状の日本旅館が国際的にどのくらいの価値を持っているかということを知る必要があると思います。
旅は宿に泊まるだけではなく、見たいものや、食べたいもの、体験したいものなどたくさんの要素が詰まっています。日本にはその一部分だけを切り取って商品化する、不思議な構造ができ上がってしまいました。団体旅行が主流だった時代には、このスタイルで良かったのですが、日本国内でも旅の形態が変わり、世の中の需要が変化しています。残念ながら一つの宿泊施設だけを売ろうとする姿勢は、旅行者のニーズと合わず、現状のような「時代に合わない」状態になっているのだと思います。
国際観光施設協会はもともと建築や設備など、施設の整備を進める協会でしたが、現在は「地域の中に旅館がある」という考え方でさまざまな事業に取り組んでいます。
※ 詳細は本紙1534号または2月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。