「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(114)3秒間のお辞儀に想いを込めて 己を見つめ高めていく
2020年7月4日(土) 配信
とても感動的な風景に出逢いました。
それは、あるホテルの日常だったのかもしれませんが、私にとっては初めて見る風景でした。
多くの方にとってもあまり知られていない風景なのかもしれません。
ホテルや旅館には、お客様を想う多くのスタッフが日々笑顔で働いています。一歩足を踏み入れた瞬間、あるいは入る前から、たくさんのドラマが始まります。
素敵な笑顔に迎えられて、いくつもの感動風景に出逢える場所がホテルや、旅館です。
その日もワクワクした気持ちでホテルに到着したのです。
「お帰りなさい、西川様」と笑顔で迎えられ、客室に案内してもらう。
「ほかにご不明な点や、お手伝いできることはありませんか」と声を掛けられる。実に気持ちの良い会話です。
食事のために部屋を出てエレベーターに向かう途中で、廊下の先の部屋の扉が開き、案内を終えた客室係が出てきました。
「ごゆっくりとお過ごしください」とお客様に退出のあいさつをして、そのまま扉を離れると思ったときのことです。
彼が身体の前で手を整えて背筋を伸ばし、扉に向かって3秒間、深いお辞儀をしました。
本来であれば、誰にも見られることのないお辞儀です。
「数あるホテルの中から当館を選んでいただき、本当にありがとうございます。ゆっくりとお寛ぎいただき、最幸の時間をお過ごしください。そのために私たちは、いつでも最幸のおもてなしをさせていただきます」。そんな声が聞こえてきそうな感動的な風景でした。
誰かに見られているからするのではない。お客様のために何ができるだろうかと常にお客様を想う意志があるのです。
その想いを高め、行動に移すための自分自身への覚悟の証なのだと感じました。
お客様の前では常に笑顔で、身に付けた振る舞いに磨きをかけながら一生懸命に行動しても、「お客様や、上司に評価してもらえない」といった、声を聞くことが多くあります。
「今日は少し疲れているし、仕事にも慣れて誰にも見られていなければ、少しくらい手を抜いても、それをカバーする技術も身に付けたから大丈夫」と考えてしまうことはないでしょうか。
お客様と向き合う瞬間だけが仕事ではなく、常にお客様のお役に立てるように願う想いが大切なのです。その想いを育てるためには、自分自身の仕事の目的を見つめ、高める行動をすることが大切です。
3秒間のお辞儀に込められた想いを私はそう理解しました。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。
従業員の心身をすり減らす所業をもてはやすのはやめて下さい。こちら側ばかりが気持ちよくても、相手側の心のどこかにある少々卑屈な気持ちを想像してごらんなさい。わたしが何度も投稿するのは、こちらで書いてあることがホスピタリティだということを問題視しているのです。これらのことを書きたいのであればおもてなしでも何とでも書いてください。ただホスピタリティの言葉を使うのだけは我慢がなりません。やめていただきたい。いちど根本からホスピタリティとはなんであるかを一から勉強してください。