「旅館コンサルタント大坪敬史の繁盛旅館への道(57)」 現実的な新型コロナ対策ステージへの移行
2020年7月20日(月) 配信
緊急事態宣言が解除され、6月1日(月)から営業を再開される旅館も多いと思います。
今までは「新型コロナ対策」の「理想の対策」の部分を強化することを重点に置いていた旅館も、実際にお客様が宿泊されるようになって、「現実ラインの対策」に軸足を移しています。
業界団体などから、新型コロナ対策マニュアルが提示されていますが、あの通りに実施すると旅館の良さや「おもてなし」が消えてしまうように考えます。
あのマニュアルでは、言葉は極端ですが、ありとあらゆる対策を詰め込んで作ったマニュアルのようであり、現実的にそのラインに沿っての対応ができない旅館もあると思います。
何かお客様とのトラブルがあった際には、「旅館側に責任を負わされかねない」という懸念を抱かせるマニュアルであるように思います。
旅館という「業」は、館の造りから運営形態まで、その「種類」は多岐にわたるもので、一つのマニュアルですべてをカバーすることはできません。
現状、対策を講じてホームページなどに掲載されている旅館も多いですが、「まずは最大限に取り組み、実際にお客様がご宿泊いただくなかで、現実的な対策に移行する」と、考えている旅館も多いことでしょう。
そういった「現実的な対策」の積み重ねが、「旅館の新型コロナ対策」文化として生成され、確立されるわけです。今の対策が未来永劫正しいかというと、そうではありません。
ただ、新型コロナに対して無策ということではいけないので、それぞれの旅館にあった対策は必須です。
実際に現場の皆さんから聞いた「この時期に旅館にご宿泊されたお客様の特徴」として、次のような声がありました。
①地元のお客様やリピーター様がほとんど②自粛疲れでストレスが溜まり、お酒をたくさん飲まれるお客様も多い③スタッフがマスクや手袋を着用しても、お客様からのクレームはなく、手袋を着用していない他の旅館でもクレームはない④スタッフが「いつもはお部屋でお呈茶をさせていただいているのですが、いかがしましょうか」と伺うと、ほぼ100%のお客様が部屋に入ってきてもらってのお呈茶を希望する(旅館に来ているのだから、おもてなしは極力受けたい)⑤旅館入口や食事処入口で「手指の消毒」を求めても、文句を言われずに「今の時期だからしょうがないよね」と素直に従っていただける。
このように、新型コロナ対策について「していない」ということはあってはならないことですが、お客様は過度な対策を求めておられないというのが現実です。
それでは「どの程度までの対策が必要か」という問いがありますが、現時点でその答えはありません。
ただ、全国の宿泊施設や他業種などで「現実的な対策方法」を確立するまで、しばらくはこのまま続いていくと思います。
コラムニスト紹介
旅館コンサルタント 大坪 敬史 氏
大手旅行会社での実務業務を経て船井総合研究所入社。インターネットを駆使したWeb販促&直販売上倍増&即時業績向上ノウハウには定評があり、数多くの宿泊産業の業績向上に貢献。観光文化研究所を設立し代表取締役。