投資呼び込み、生産性向上へ 旅館の「負のスパイラル」脱却を支援 観光庁
2020年7月21日(火) 配信
観光庁(蒲生篤実長官)はこのほど、停滞する地域旅館の生産性を向上させるためのスキーム(計画の枠組み)を提言した。今年5月から3回にわたり、「旅館への投資の活性化による『負のスパイラルの解消』に向けた支援のあり方に関する分科会」を開き、その報告書をとりまとめた。
分科会は、地域旅館への投資の呼び込みのほか、生産性向上をはかるための課題の整理や支援策を考える目的で設置された。
東京女子大学現代教養学部国際社会学科教授の矢ケ崎紀子氏が座長を務め、観光庁をはじめ各省庁、オブザーバーとして金融庁と内閣府が参加。また、各自治体、金融機関、宿泊事業者が名を連ねた。
地域旅館産業が抱える構造的な課題として、「負のスパイラル」が挙げられる。①投資停滞②施設の老朽化・サービス低下③客単価の低水準化④さらなる施設の老朽化・サービス低下――という事態に陥っている旅館が、全体の約3割存在する。
この問題に加え、新型コロナウイルス感染症を踏まえた新しい旅行ニーズに対応するためにも、一定の投資が求められる。「地域連携の核となる有力旅館(全体の約1割)が、地域全体を牽引する立場として、既にある支援制度の活用も含めたわかりやすい支援策が必要」(分科会)と結論づけた。
支援の方向性としては、地域旅館の再生や、新陳代謝の促進のための新しい仕組みを作り、その支援を行う。これにより、「地域全体の生産性の向上と、高付加価値化を目指す」とした。
地域の経営困難な旅館に対して、「所有」と「経営」の分離を提案する。「経営」は、地域の有力旅館を含めた意欲ある担い手に転貸し、地域旅館の再編を促す考え。
また、「地域旅館共通機能プラットフォーム」を創設する。地域旅館全体で仕入れやマーケティングなどを一体的、効率的に行うもの。
今後は同報告書の内容を踏まえて、関係機関と連携し、「投資スキームの構築に努めていく」(観光庁)とした。