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津田令子の「味のある街」「ソースカツ丼」――ヨーロッパ軒総本店(福井県福井市)

2020年9月6日(日) 配信

ヨーロッパ軒総本店「ソースカツ丼」950円(カツ3枚のせ)▽福井県福井市順化1-7-4▽☎0776(21)4681。

 福井では、カツ丼と注文するとソースカツ丼が出てくる。カツ丼といえば玉子でとじるのが一般的だが、そのようなカツ丼を食べたい場合、玉子カツ丼と注文しなければならない。サクッと揚がった厚過ぎない絶妙な厚さ(8㍉程度)のカツと、秘伝のソースの旨味が忘れられない。

 ソースカツ丼は、1992年に長野県駒ヶ根市が「ソースかつ丼による町おこし」を始めたことで、東京でも提供する店は結構あるのだが、やはりなんといっても福井のそれが知名度、人気ともに群を抜いている。

 ヨーロッパ軒は、1939(昭和14)年創業の老舗洋食店である。店の紹介文によれば、創業者である高畠増太郎氏がドイツの日本人倶楽部で6年間の料理研究の留学を終え、東京で開かれた料理発表会にドイツ仕込みのウスターソースにくぐらせた“ソースカツ丼”を披露したのが始まりだという。以来、福井の名物として知られる。

 ヨーロッパ軒の「ソースカツ丼」が美味しい理由というポスターには、①ソースがちがう②パン粉がちがう③ご飯がうまい――と書かれている。確かにソースはスパイスが利いて甘過ぎず、くぐらせ具合がバッチリなのだ。パン粉は目が細かい特注のものを使い、ソースカツ丼との相性がいい。ご飯は意外に知られていないが、コシヒカリが初めて作られたのは福井の農業試験場である。福井ではどの飲食店に入っても、ご飯が当たり前のように美味しい。流石、米どころ福井と納得させられる。

 通りの角にあるレンガ造りの店は行列ができ、入るとソースの香りに包まれている。しばらくして目の前にソースカツ丼がやってきた。フタを開けると大きなカツが3枚ものっていた。ボリュームも香りも満点だ。

 通はフタにカツを移し、一枚ずつとってご飯とあわせて食べるそうだ。ご飯にもう少しかかっていたらなあと思わせる量のソースがかかっている。地元の人は「この微妙なソースのかかり加減が絶妙なんだ」という。このソース、確かに今までに口にしたことのない絶品だ。一度食べると必ずまた食べたくなる丼ぶりであること間違いなしだ。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

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