8月の宿泊業倒産4件 2カ月連続で1ケタに Go Toの効果で経営に影響も 東京商工リサーチ調べ
2020年9月9日(水) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2020年8月の宿泊業倒産は4件(前年同月は4件)となった。8月としては19年に並び、過去20年間で最少。2カ月連続で1ケタに抑えられた。同社は、新型コロナウイルス禍対策の持続化給付金や、民間金融機関の返済猶予など、資金繰り支援策が「功を奏した」と見る。これに加え、Go Toトラベルキャンペーンの効果が観光業の経営を左右する見通しだ。【馬場 遥】
□8月の宿泊業・旅行業の倒産概況
宿泊業の8月の負債総額は29億円(前年同月は6億5100万円)と、2カ月ぶりに前年同月を上回った。負債10億円以上の倒産が2件発生し、負債総額を押し上げた。
形態別では破産が3件、特別清算1件。
地区別では北海道、関東、中部、九州で各1件となった。
おもな倒産事例として下田海南荘(静岡県下田市)が、7月29日(水)に特別清算開始決定を受けた。負債総額は約14億3千万円となった。当地で代表的な旅館「黒船ホテル」を運営していた。客室総数50室すべてがオーシャンビューで人気を博し、1984年12月期には約15億円の売上高を挙げていた。伊豆半島の観光衰退で赤字計上が頻発し、ホテルの改装資金の借入金などで返済負担が重く、株主総会の決議により6月24日(水)に解散した。
別府温泉の観光ホテルであるホテル三泉閣(大分県別府市)は、8月21日(金)に破産申請をした。負債総額は約10億円。景気低迷や別府観光の衰退で売上が落ち込み、2000年以降は年間売上高が8億円を割り込むようになった。20年1月期にはラグビーワールドカップの影響で約6億3千万円の売上高を確保したが、ホテル設備の老朽化による改装などで債務超過に陥っていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、事業継続を断念した。
一方、旅行業の8月の倒産は1件で、2カ月連続で前年同月と同数だった。1~8月の累計倒産件数は18件(前年同期は17件)となり、若干ながら前年を上回って推移している。
負債総額は2億5千万円(前年同月は2億円)で、2か月ぶりに前年を上回った。
同社は、海外渡航制限の緩和が進まないなか、海外旅行を主体として扱う旅行会社に「厳しい業況に晒されている」と懸念を示した。
飲食業(1~8月の新型コロナ関係の破綻数66件)と宿泊業(45件)に比べて、旅行業は比較的低く抑えられているが、今後コロナ禍の収束が長引くほど「経営が行き詰まる会社が増え、自主廃業を含んだ破綻が増加する」(同社)と危惧している。