「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(117)お客様と呼んで3流 名前を呼んで2流 一流とは? ○○さんで関係深める
当社内で、お客様を「客」と言う企業が少なくない、という話が出ました。これでは、「おもてなしの想い」は育たないと感じました。クライアント企業には「社内でも『お客様』と当たり前に言えるようにしましょう」と話をしています。
1月にある企業を訪問したとき、新年度ポスターのスローガンを見て驚きました。そこには「お客様を、お客様と当たり前のように呼べる会社になろう!」とあったのです。その年には、「新しいおもてなしの目標」を企業スタッフたちと話し合いました。すると、翌年には「お客様と呼ぶことを卒業して、○○さんとお名前で呼べる会社になろう!」とスローガンが変わっていたのです。以来、その企業の「おもてなし力」は、地域のお客様から高い評価もらえるようになったのです。
年2回のセミナーで、「お客様を、お客様と呼べて3流。〇〇様とお名前を呼べて2流。では、一流の企業に必要な呼び方とは。答えは〇〇さんです」とお話しすると、参加した高級レストラン経営者から、「お客様を〇〇さんとは、私どもでは呼べません」と、ご意見が出ました。場の雰囲気や客層もあり、さん付けでは失礼なこともあります。しかし、私は「おもてなし力を高めて、〇〇さんと呼んでも失礼にならない関係性を築くことが大切です」と、あえて申し上げたのです。
ホテル・リッツ・カールトン東京で、私を「西川さん」と呼ぶスタッフがいます。初めのころは、「西川様」でしたが、何泊目かにスタッフへ「私はいつになったら、リッツ・カールトン東京の本当のお客様になれるのかなぁ」と問い掛けました。
「『様』と呼ばれると隔たりを感じる。親近感をもって、『さん』と呼んでもらえればうれしいね」と話したのです。すると、そのスタッフは親しみを込めて「西川さん」と呼ぶようになり、リッツ・カールトン東京が我が家のように感じることができるようになったのです。
お客様をどのようにお呼びするかは、おもてなし力を高めて行く目標にもなります。常に「様」と呼ばれ、それが当たり前の人には、「〇〇様」が心地よいかもしれません。しかし、「様」と呼ぶことで高級店である印象を保つことはできません。お客様との関係性を深めて行くことが、おもてなしでリピーターを創造することにつながるのです。
「丈次さん」と呼んで下さるクライアント企業やお店がたくさんあります。
呼び慣れていない方にとっては、照れくさい呼び方かもしれませんが、私にとっては最幸にうれしい響きで、特別な企業であり、お店になっていったのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。