温泉は妊娠経過に影響なし 妊娠中の温泉入浴と医学的トラブルの関連調査
2020年11月4日(水)配信
日本温泉気候物理医学会(理事長=宮下和久・和歌山県立医科大学学長)はこのほど、妊娠中の温泉への入浴が流早産や妊娠高血圧症など、医学的トラブルに関連しないことを確認したと発表した。
同医学会は2016~18年にかけて、温泉地(大分県別府市と鹿児島県指宿市)の妊婦1723人を対象に調査を実施。医療法人コラソン理事・大分県産婦人科医会会長の岩永成晃氏を責任者に、妊婦の温泉浴の安全性を研究してきた。
これによると、調査対象の妊婦の約80%が週1回以上温泉入浴をしていた(妊娠初期:79・8%、中期:79・8%、後期:74・6%)。このうち、産科的トラブルの発生率は30・2%(442例)で、これは他の調査と比較して一般的な妊娠中の発生頻度と変わらなかった。むしろ妊娠後期には流産や早産、高血圧含め産科的トラブルが有意に少ない結果となった。
環境省は2014年に、温泉法に基づく温泉入浴の禁忌症から「妊娠中」を削除した。最新の医学的見地から温泉浴の禁忌症とする科学的根拠が認められないとの理由だが、いまだに一般への認知は広がっておらず、妊娠中に温泉へ入浴することへの不安の声は多いという。
同医学会は今回の調査結果により、温泉が妊娠経過に悪影響を与えないという情報が広がることを期待する。今後も妊婦が適切に温泉浴ができるよう啓発を続けていく考えだ。