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東日本大震災から3年 ― 観光は大きな“地域回復力”を持つ

2014年3月11日
編集部

 未曾有の大災害となった東日本大震災から3年が経った。大きな犠牲と引き換えに、大きな教訓を得た。2011年3月11日の「あの日」まで気づかなかったことや、「あの日」を境に知ったこと、見えるようになったものが、たくさんある。

 3月2日、宮城県仙台市で東北6県の知事が一堂に会したシンポジウム「東北観光がんばります!!」に参加した。現実的な課題を山のように抱えながら、各県の知事は、しっかりと前を向き、自らがセールスマンとなって観光による地域復興の意気込みを熱く語っていた。NHKが放映したドラマ「八重の桜」や「あまちゃん」が人気を博し、全国から多くの観光客が集まった事例についても、知事たちはうれしそうに話した。「物語」が持つ力の大きさを感じ取った。

 JR各社は震災後から東北各エリアでデスティネーションキャンペーンを展開し、多くの観光客を東北に送って来た。さまざまなイベントや企画を行い、大々的な観光PRを今も継続的に行っている。また、全国の旅行会社や、航空会社なども東北復興ツアーを造成し、協力もしてきた。4月には三陸鉄道が全面開通する。日本中をつなぐ新幹線の「希望を乗せる」力、そして、小さなローカル鉄道が地域の人々の生活や、街に活力を与える役割の大きさも、震災によって改めて知ったことの一つだ。

 さらに、エネルギー問題も震災後、大きな問題として浮かび上がってきた。観光業界では国際観光施設協会が唱える「省エネ化ではなく、消費エネルギー自体を小さくする小エネ化」への取り組みの必要性が今後ますます高まる。とくに旅館・ホテルでは、自然との共生を考慮しながら、知恵と工夫による「小エネ」の研究や取り組みを、今後一層進めてほしいと思う。

 震災から3年が経った今、観光客が被災地を訪れることがこれまで以上に重要になっている。東北各県の知事は外国人観光客が未だ震災以前の水準に戻っていないことを課題に挙げ、国にも積極的な情報発信を強く要望した。震災後から、大きな文化・スポーツイベント、国際会議を東北で開く努力を官民一体で行ってきたが、今後も継続的に取り組むことが重要だ。

 東北の魅力あふれるツアーを作ることは、旅行会社や鉄道会社、航空会社の腕の見せどころである。JR九州の豪華観光列車「ななつ星」が九州を一つのブランドとしてまとめる一端を担っているように、「東北を一つ」に結びつける創造性あふれるアイデアや、より強力な連携が必要になるだろう。

 被災した地域を復興に導く原動力となるのは、観光による人の交流である。観光が持つ地域経済の回復力がこれほどまでに大きいことを、東日本大震災から3年が経過した今、改めて気づかされる。想像してほしい。被災地に誰一人訪れることのない姿を。これほど空しい風景はない。旅行業界は「モノ」を売る商売ではない。売る「モノ」は何もない。けれど、一見何もないところにも「価値を生み出す」魔法の力を持っている。日常生活の中ではこの素晴らしい魔力は鳴りを潜めている。埃を被っている。だが、大きなものを失い、未来の再生に向け立ち上ろうとするとき、この不思議な力が鮮やかな虹のように希望をもたらし、大きな力を発揮するのだ。

(編集長・増田 剛)

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