「津田令子のにっぽん風土記(67)」安心・安全で迎える御前崎~ 静岡県・御前崎市編 ~
2020年11月14日(土) 配信
11月に入り「海から昇る朝日、海に沈む夕日が見られる季節になりましたよ」と、静岡県御前崎市観光協会で事務局長を務める小野木邦治さんは言う。
御前崎といえば、きれいな海、海と行きかう船を護る灯台、まとまった数のアカウミガメが産卵のために上陸する保護、監視の行き届いた砂浜、ほどよい波を求めてやって来るマリンスポーツの憧れの地。さらには子供も一緒に楽しめる遠浅の海岸を有する「海の街」として人気を博している。
とくに晩秋から初冬、さらに冬から春にかけての御前崎は、話題に事欠かない。まずは、冒頭で小野木さんがおっしゃるように、御前崎の地に立つと朝焼けに染まる波光を眺めながら物思いにふけてみたり、周囲をオレンジ色に輝かせながら沈む夕日に思いを馳せたり、時にセンチメンタルに、あるいはロマンティックに海と過ごすことができるのだ。
2つ目は、御前崎で養殖された高級魚「御前崎クエ」の季節到来だ。クエは、スズキ目ハタ科マハタ属ハタ亜科に属する高級魚だ。透明感のある白身で、しっかりして硬い歯ごたえが特徴だ。これをフグのように薄造りにすると、食感の良さに加え、しっかりとした旨味が感じられる。
3つ目は、これから3月まで本格的なシーズンを迎えるウインドサーフィンの聖地に、多くのウインドサーファーが風を求めてやって来る。この地の風の素晴らしさは、かつて世界大会が開かれたこともありお墨付きだ。
4つ目は、地勢的にも貴重な「風成樹形」だ。冬に灯台近くの樹木に、強い西風が吹き続けることで草木が一斉にお辞儀をしたように東を向くようすが見られる。
5つ目は、御前崎の田園地帯の、そこここで干し芋を乾燥させている冬ならではのほのぼのとした風景に出会えること。さらには5月までは港に揚がったばかりの伊勢エビがリーズナブルな価格で食べられることだ。
コロナ禍での宿泊施設の取り組みも気になるが、観光協会会員の宿の9割が「安心・安全」のステッカーを貼り、日々、50にも及ぶ厳しいチェック項目をクリアすることでお客様をお迎えしている。
坂の多いこの街で4月から始まったうれしい試みは、電動アシスト自転車Eバイクの貸し出しだ。「ファミリー層を中心に『目的地まで気軽に行ける』と利用者が急増しています」(小野木さん)。これさえあれば多少のアップダウンはなんのそのである。
今すぐ、御前崎に行ってみよう。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。