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「提言!これからの日本観光」 ふたつの会議

2020年11月15日
編集部

2020年11月15日(日) 配信

 コロナ禍のため緊急事態宣言発出後の4~5月から国内のほとんどと言っていいほど、観光関係の会議や会合、イベントなどが中止・延期に追い込まれた。その後、少しずつ復活の兆しが見え始めたが、7月以降に蔓延が再発し、現在は中途半端な社会経済の動きが広がりつつある。7月に開かれた2つの会議はウィズコロナ時代を意識するものだった。

 「観光」のような分野では、企画を考えるにも各施策の方向を考えるにも、絶えず関係者同士の会議などによる論議、いわば熟議が必要である。即ち、「観光」は人の「心(観光意思)」に基づく行動であるから、「観光」への人々のニーズとその動向を絶えず担当者が把握し、これを共有するなかからさまざまな観光推進への方向、アイデアなどが得られるからである。

 従って、会議の中止、とくに年度初の当面の施策展開を決める時期での会議中止は致命的だった。その時期再開された会議だけに大きく期待して出席した。

 そのひとつは「オンライン会議方式」であった。関係者の努力の結果、地方数カ所と本部スタッフと会議できることになった。しかし、内容は残念だった。映像が映る間に発言するため、どうしても一方交通の反覆に終わり、相互の質疑や討議がしにくかった。

 また、背景によっては相手の姿が正確に映らないときがあり、意見や印象が上手く伝わらず、その人の映像からバイアスが掛かることが多かった。とくに通信環境が悪くなった際、かん高い無機質な音声が変形された顔つきと共に映り、「心」の通いにくい会議となった。

 「観光」のように「心」を重んずる会議では今の技術水準のオンライン会議の導入は無理と考えざるを得なかった。

 コロナ対策を盛り込んだ通常の会議にも出席した。会場は人数に比し、やや広い部屋を用意。座席の間隔は2㍍以上空けた。マスクを着用のうえ、発言は自席で行い、一人ひとりにマイクを用意した。扇風機で室内は絶えず香り強い香水の匂いがする微風がそよぎ、落ち着いた雰囲気で参加者の肉声による発言討議が行われた。

 出席者の目つきや顔つきを見ながら発言を聞くと、「心」が伝わった。その交流が会議の効果を高め、熱心な討議を久しぶりに実感できた。しかも、挨拶を省略したこと、会議の時間をなるべく短縮したいとの司会の要望もあり、普段の3分の2くらいの短時間で議題審議を終える効率的な会議も印象に残り、対面会議の効果が確認できた。

 また、対策と会場進行の工夫で安全を確保でき、従来以上に成果を得られることも実感した。何事にも「心」の伴わない会議などは人間同士である以上、程度の差はあれ、効果は低いと思う。

 「心」の要素が強く求められる「観光」の会議から、コロナ禍に対応する「会議の在り方」のモデルを提案してはどうかと思う。コンピューターでは「心」を伝えることは難しい。人間の生の声が如何に大切か、当然のことを両会議で確認した。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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