〈旬刊旅行新聞11月21日号コラム〉晩秋の御前崎市 人口密度が低い浜岡砂丘へドライブ
2020年11月21日(土) 配信
新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、観光業界にとっても不安な状況となっている。昨年までは世界中でオーバーツーリズムが大きな課題となっていた。コロナ禍以降は3密回避が重要で、いずれにしても旅行は、過密をならして、平準化したほうがいいということだ。
その意味で、私は、サハラ砂漠の一粒の砂のような存在にすぎないが、旅行の平準化に貢献してきたと自認する。
というのも、渋滞が極度に嫌いなため、クルマで旅をするときには眠い目をこすりながら、夜明け前の4時ごろに出発するので渋滞知らずだ。
バーベキューをするときも、早朝に決行するので、皆がテントを張ったり、火をおこし始めるころには、片付けは終わり、撤収するスタイルだ。
Go Toトラベルキャンペーンが本格化してから、「週末には高速道路も長い渋滞ができている」との弊社編集部員の情報もあり、旅先を選定する際に「渋滞回避」は重要なポジションを占めている。
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そんななか、平日に休みが取れたので、ふと、どこかに行きたくなった。
晩秋から初冬にかけての時期は、空気も澄んで気持ちいい。日帰りのドライブをしようと思った。
そういえば、まだ子供が小さいときには、千葉県の九十九里浜に足繁くドライブに行っていた。子供が多かったので、日帰りになった。
どこまでも続く砂浜に、くるぶしほどの波が押し寄せる波打ち際で、海水パンツを履かされた子供たちが砂のダムを造るようすを眺めながら、ぼんやりと半日を過ごした。
当時は三菱パジェロに乗っていた。4輪駆動車が好きで、むきだしのタイヤを背面に付けたスタイルが気に入っていた。「昭和」の最後の香りをまとったクルマで、パリ・ダカールラリーの雄姿の面影を残していた。しかし、それらはもう遠い昔の出来事だ。
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本紙11月11日号に、津田令子さんのコラム「にっぽん風土記」で静岡県御前崎市の魅力について書かれていた。私はその情景を思い浮かべながら、御前崎市に行こうと決めた。
御前崎市は神奈川県の自宅から約200㌔の道のりだった。西に向かうときには、新東名高速道路を使うことが多かったが、久しぶりに東名高速道路を走った。新東名と比べ、東名高速道路の傷みも目に付くようになった。ちょうど東京ドームができたときに、後楽園球場を眺めるような気分に似ていた。
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海の幸に恵まれている御前崎市で、美味しいものを食べることが1つの目的だった。
同市を代表する「なぶら市場」で迷わず海鮮丼を注文した。海鮮丼は、当りとハズレが大きい類のメニューだが、結果は「当り」で満足だった。
その後、御前崎を訪れたもう一つの目的である浜岡砂丘に向かった。鳥取砂丘や九十九里浜もそうだが、私は青い海と白い砂が延々と続く風景に引き寄せられていく。人口密度が極端に低いことが一目瞭然だからかもしれない。
森の中も密度は低いが、視界はそれほど広くない。見ようによっては、「この世界に自分ひとりだけが存在している」という気分を味わえないこともない。浜岡砂丘の小高い丘の上から、青い惑星を一望して踵を返した。
(編集長・増田 剛)