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新しいホテルサービスのカタチ 「人と接する機会」見極めを (メズム東京・生沼総支配人に聞く)

2020年11月22日
営業部:後藤 文昭

2020年11月22日(日) 配信

生沼久総支配人

  東京・竹芝に4月27日、「メズム東京、オートグラフ コレクション」が開業した。全客室にデジタルピアノを導入するなど「五感で魅了する体験の提供」に注力。ホテルエントランスや16階エレベーターホールに、ホテルオリジナルのフレグランスを漂わせ、宿泊客をもてなす。「今の東京のカッコよさと躍動感を発信するホテルにする」と語る生沼久総支配人に、ホテルが提供する価値観や自身の経験に基づき導き出した新しいホテルサービスのカタチを聞いた。  

                 ◇

 「メズム東京、オートグラフ コレクション」は、私のこだわりをすべて詰め込んだホテルです。哲学は、「五感を魅了するサービスやコンテンツを提供し、インスピレーションを与え、人々の人生を豊かにするホテル」です。このため、ホテル内には、ゲストの五感を魅了し、思わぬ出会いや新たな発見となるような仕掛けをたくさん用意しています。

 その1つが、全客室にデジタルピアノを入れたことです。ピアノに触れたことのないゲストの方も親しめるよう、内蔵されている60曲にあわせて一緒に弾ける練習機能や、オーディオ再生機能が搭載されています。また、客室内のタブレットには楽譜や初心者用弾き方動画を用意するなど、普段からピアノを弾く方にも、触ったことがない方にも満足いただける工夫も施しています。

客室

 メズム東京は、東日本旅客鉄道(JR東日本)グループの日本ホテルとマリオット・インターナショナルが初めて提携したラグジュアリーホテルですが、既存の概念とは真逆だと思っています。

 一般的なラグジュアリーホテルと言えば、「静か」、「上質」、「癒される」といったイメージですが、メズム東京は反対に「ここに来たら元気がもらえる、明日への活力がわく」ホテルになっています。実際、外国の富裕層の方々はとてもエネルギッシュなので、「こんなラグジュアリーホテルもいいよね」と、新しい価値観を発信できたらと思います。加えて、マリオットの「オートグラフ コレクションホテル」の価値観である「唯一無二」を体現したことで、これまでのJR系列ホテルのターゲットとは違う新しい客層を取り込む布石になると確信しています。

ロビー

 こだわりをすべて詰め込んだメズム東京では、最新技術や遊び心のあるアイテムの導入など、「新しい取り組みの第一歩」を歩み続けたいと思っています。

 ホテル業界やそれに関連するリネンの会社などでは、人材不足が大きな問題になっています。この問題を解決するためには、ゲストの目に触れない場所にも積極的に最新技術を導入することが有効だと思っています。

 メズムでは、全自動でリネンのカートを各階に運搬するロボットを既に導入しています。

 一方で、新型コロナウイルス感染症の流行、拡大によって人と接する機会が減り、デジタルトランスフォーメーションが進むなかだからこそ、ホテルは本当に必要な「人と接する機会」を見極め、大切にしなければなりません。

 サービス業界で最近、「マルチタスク」という言葉が出てくるようになりました。マルチタスク自体は、製造現場で長年行われてきていますが、両者で目的が違うように感じています。

 製造業がマルチタスクを導入したのは、よりよい製品を作るため。不良品を減らすために工程を見直し、不要在庫もなくすためです。

 一方サービス産業では、生産性を上げるためにマルチタスクを導入しようとしています。

 確かに生産性の向上もマルチタスクの導入による成果ですが、大前提は、よりよいサービスを行うための手段であることだと思います。1人の人が忙しいときにフレキシブルに動ければ、少ない人数でエリアをカバーできるようになります。同時に、働く人もスキルや引き出しが増えることにつながります。ゲスト目線でも、リクエストした内容が宿泊やレストランのことなど他部門にわたる内容であっても、頼んだ人が対応してくれるので、安心感につながります。こうした思いをカタチにしたのが、「スターサービス」です。

 スターサービスは、宿泊部門と料飲部門の垣根をなくし1つのサービスチームとして、ゲストからいただく要望に対してワンストップで柔軟に対応することにより、唯一無二の最高のホスピタリティの提供を目指しています。

 「組織の在り方から変えることで、働く人が自由度をもって、ゲストに寄り添うサービスを提供し、北極星のような存在となる」という強い思いを、「スターサービス」の「スター」に込めています。

 現在はスタッフの教育期間中ですが、2年後には、同サービスを完成させ、全エリアでプロフェッショナルなサービスクオリティを提供します。

 そのために私は、働く人の「環境づくり」と「マインドチェンジ」ができる環境を整えます。

 今後このホテルは、コンテンツを入れていく段階に入ります。まず初めに手掛けるのは、世界の大都市に比べて日本がうまくできていない「水辺の活用」です。ホテルが建つ「ウォーターズ竹芝」には、定期船が就航しているので、水辺の楽しみ方や、船上から見る景色の面白さを発信していきたいです。

生沼 久(おいぬま・ひさし)総支配人 略歴 

 1994年ウェスティンホテル東京の開業メンバーとしてキャリアをスタートし、宿泊部や経理部購買課のマネジメントを経験。2017年に日本初進出のライフスタイルブランド・モクシー東京錦糸町で総支配人に着任し、ホテル全体の運営責任者に就任。18年6月、日本ホテル入社、同年10月プロジェクト推進部竹芝開業準備室室長、19年6月に日本ホテル執行役員就任。

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