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DXは新時代のカタチを作る ビジネスモデルの変革と効率化を DXシンポジウム

2020年11月25日
編集部:入江千恵子

2020年11月25日(水) 配信

シンポジウムはエストニアと中継をつないで行われた

 総合観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン 旅の祭典in沖縄」会期中の10月30日、沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)・シンポジウム」を開いた。「DX先進地に学ぶ沖縄観光の未来」をテーマに、エストニアや石川県加賀市の事例紹介のほか、沖縄県の観光産業にもたらす可能性について意見を交わした。

 クロストークは「DXがもたらす沖縄観光の可能性とは?」と題し、モデレーターは沖縄ITイノベーション戦略センター理事長でResor Tech Okinawaおきなわ国際IT見本市実行委員会委員長の稲垣潤一氏が務めた。登壇者はシビックテックジャパン代表理事の福島健一郎氏と沖縄市経済文化部観光振興課主幹の宮里大八氏。SetGo Co-founderの齋藤アレックス剛太氏は、エストニアから中継をつないで参加した。

 DXの定義について、稲垣氏は「ビジネスモデルや組織の変革」であり、「目的は企業の競争優位性の確立」と述べた。そのうえで、DXは「企業活動を超えて、時代のカタチを新しく作っていく、それほどインパクトのある歴史の次の段階」と整理した。

コロナ禍にDX推進を 負担でなく業務の根幹に

 「なぜ今、DXが必要なのか」との稲垣氏の問いに、福島氏は日本の人口減少を引き合いに「いかに効率よく課題解決をはかれるかが求められている」と述べた。また「コロナ禍も背景にある」と述べ、「デジタルは元々、人と接触しない場合でも問題がないよう進歩してきた。コロナ禍に適した側面がある」との考えを示した。

 だが、中小企業が大多数を占める沖縄でのDX化はハードルが高い。「小さな組織にとって、DX化はどのようにすれば良いか」との問いに、宮里氏は行政の立場から「中小企業や観光業者には、さまざまなカタチで支援している。厳しい時期ではあるが、コロナ禍だからこそできる取り組みをしてほしい」とアドバイスした。

 キャッシュレス化など「観光客や消費者が便利になり、またそれがビジネスになる。DXを負担と捉えず、社員も元気になり、お客も喜び、ウィンウィンの関係を目指してほしい」と呼び掛けた。

 齋藤氏は「DXが進む石川県加賀市のように、既存のプラットフォームを積極的に利用すること。先行投資も時間も抑えられる」と提案。福島氏は、経営層の視点から「DX化を進めるに当たり、ITが業務のおまけではない。業務のなかの根幹と理解することが非常に大事」と強調して語った。

IDカード普及率99% エストニアの活用法は

 基調講演は、齋藤アレックス剛太氏が、日本におけるデジタルID展開の可能性や、エストニアの事例について語った。デジタル化について齋藤氏は「目的ではなく手段。まずは課題を明確にしてからデジタル化に向けた検討をすることが重要」と力を込める。

 沖縄でデジタルID活用が想定されるシーンは、宿泊施設の予約システムに組み込むことで、チェックイン時の入力が不要になることや、県民限定の割引制度導入などがあるとした。

 電子国家といわれるエストニアでは、2002年から運用している「デジタルIDカード」(公的身分証)の普及率が99%に達し、行政サービスのオンライン化率も99%だという。提供サービス数は277、行政機関の数は115にのぼる。

 IDカードは政府が発行するが、行政・民間を問わず活用できる。電子申告納税システム「eTax」は約96%の人が利用しているほか、多くの高齢者も利用するeバンキング、教師と生徒・保護者をつなぐeスクール、電子契約プラットフォームなどにも利用できる。

 電子化が進んだ要因の1つには、人口密度の低さがある。ソビエト連邦から独立後に十分な数の役所を設置できず、苦肉の策で90年代後半からデジタル化を進めた。

 一方で、日本もデジタル手続法の可決や、デジタル庁の立ち上げの決定など、デジタル化に向けての取り組みが進められている。

 デジタル身分証アプリのxID(クロスアイディ)は、マイナンバーカードと連携することで、本人認証ができる。石川県加賀市では20年8月から、同アプリを活用した電子申請の提供を開始。メリットには、「行政職員にITの知識がなくても、ノーコードで申請手続きをデジタル化できること、エンドユーザーもいつでもどこでも手続きができる」と話す。

 同市ではデジタル化施策と並行し、マイナンバーカード所有者と申請者を対象に商品券を配布したところ、申請率は60%を超えた。今後は、申請メニューを50に拡充することや、デジタルIDと連携した申請・行政サービスなどを充実させていく。

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