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〈旬刊旅行新聞12月1日号コラム〉旅行会社の厳しさ深刻に アフターコロナ見据え、巻き返しを

2020年12月1日
編集部:増田 剛

2020年12月1日(火) 配信

旅行会社の厳しさは深刻だ

 
 JTBは11月20日、2022年3月期までにグループの国内外従業員約6500人を削減すると発表した。また、全体の約3分の1にあたる全国115店舗を統廃合する予定だ。

 
 新型コロナウイルスの感染拡大で人の移動が難しいなか、旅行業界最大手のJTBは大きな決断をするしかなかった。 

 
 一歩先んじて、KNT―CTホールディングスは11月11日、近畿日本ツーリスト(KNT)の国内募集型企画旅行「メイト」と海外募集型企画旅行「ホリデイ」を21年3月末で終了すると発表した。

 
 そればかりではなく、全国にある個人旅行向け138店舗を22年3月末までに約3分の2を閉鎖し、団体旅行支店も95支店から約70支店に集約する。

 
 そして、35歳以上の従業員を対象に希望退職を募り、24年度末までにグループ全体の従業員約7000人を約3分の2に縮小する計画だ。

 
 「同じ釜の飯を食べてきた仲間たち」が自らの意志ではなく、旅行業界から去らなければならない状態に大きな衝撃を受け、激しい寂しさを感じてしまう。

 

 
 エイチ・アイ・エス(HIS)の店舗も約3分の1を閉鎖する。大手だけではなく、海外旅行に専門特化した中堅旅行会社や、中小の旅行会社も、経営の厳しさは深刻だ。

 
 Go Toトラベルキャンペーンが7月22日から東京都を除外してスタートした。とくに宿泊業では「これによって命拾いをした」という声を多く耳にした。

 
 しかし、店舗を中心としたリアルの旅行会社は手数料ビジネスの割合が高いため、恩恵もそれほど大きくない。OTA(オンライン旅行会社)と比べ固定費も重く圧し掛かる。自社企画の募集型旅行も思うように展開できないもどかしさがある。

 
 修学旅行は中止が相次いでいる。グループ旅行も参加予定者の誰かが「今回は、やめませんか」と口にすると、決行は不可能になる。

 
 感染症という、目に見えない敵が、人間らしい文化的な営みを奪い続けている。

 

 
 コロナ禍では平日に自宅で過ごすことが増えた。朝起きて、テレビをつけると、コロナの話題をやっている。昼も、夕方も、夜まで続く。テレビを消し、静かに読書をする。「もし、情報源がテレビしかない人がいたとしたら」と考えると、身震いがした。

 

 
 JTBの人員削減のニュースが流れた日、ネットであるつぶやきを見つけた。

 「寝て起きて、働いて、ご飯だけを食べて生きていくのはつまらない」といったような内容だった。楽しい旅行を企画してくれて、かけがえのない想い出を演出してくれる旅行会社。

 「縁の下の力持ち」として、何かトラブルに巻き込まれ、不安になったときには、強い味方になってくれる旅行会社のスタッフたち。まだ行ったことのない未知の地を「素晴らしい場所」と目を輝かせて夢を与えてくれる存在。

 それなのにコロナ感染が一時的に拡大すると、槍玉に上がることが多い。それが悔しくてならない。

 もちろん、JTBも、KNT―CTもこのまま終わる会社ではない。アフターコロナを見据え、きっと巻き返してくれるだろう。

 (編集長・増田 剛)

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