津田令子の「味のある街」「チューダーあめ」――トキワ荘お休み処(東京都豊島区)
2020年12月5日(土) 配信
このほど、昭和の漫画家が暮らした椎名町、南長崎界隈の一角に「トキワ荘マンガミュージアム」が完成した。この界隈にはトキワ荘通りを中心に漫画家たちゆかりのモニュメントや解説板がそこここに設置されている。当時の風景を思いめぐらせながら歩いてみた。
トキワ荘へは、西武池袋線の椎名町駅と東長崎駅、都営大江戸線の落合南長崎駅のいずれの駅からも徒歩10分前後だ。
手塚治虫に憧れ、雑誌「漫画少年」に投稿をしながら漫画家を夢見る日々を過ごし、やがて上京し、1952(昭和27)年12月、豊島区椎名町5丁目(現:南長崎3丁目)に棟上げされた木造2階建てのアパートに住んでいた手塚治虫との出会いが、彼らの人生を一変させた。若手時代の藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、石ノ森章太郎、赤塚不二夫……などなど。将来、日本の漫画文化を担う数々の名作を生み出す未来の巨匠たちが暮らし住んだアパートだ。
そして彼らより先にトキワ荘に住んでいた寺田ヒロオの旗振りで「新漫画党」を結成し、寺田の部屋に集い、焼酎をサイダーで割った「チューダー」を飲みながら語り合ったという。トキワ荘は1982年、老朽化のため取り壊されたが、今回紹介する「チューダーあめ」は、彼らが楽しくワイワイガヤガヤ漫画を書いていた古き良き時代の名残として、トキワ荘ゆかりの手みやげとして人気を集めている。
チューダーは、「焼酎のサイダー割り」だが「チューダーあめ」には、アルコールは入っていないので子供でも安心して口に入れられる。ほのかに香ってきそうな焼酎の風味とサイダーの爽やかな甘さとラムネ色の彩やかさに魅了される。1袋100円という手ごろな価格も魅力的。「ちょっとせつなくて、ほんのりと懐かしさに酔えた」という感想が多いという。
トキワ荘通り沿いの何軒かの店でも買うことができるけれど、次の目的地・トキワ荘お休み処でも売っている。口の中で転がしながら、昭和30年代の漫画家を目指した彼らの情熱は、令和の世の人々にどのように響くのだろうかと考えながら、目的地へと足を速めた。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。