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4月から消費税アップ ― 増税を忘れさせるほどのおもてなし

2014年4月1日
編集部

 1年には幾つか節目があるが、早いもので年が明けて3カ月が過ぎた。2014年という年が明けたとき、私は何の感慨もなく、大きな抱負もなく、淡々と年が明けてしまった。さすがにそんな我が身を不安に思った私は、ある人に「年が明けると、みんな口をそろえて『おめでとうございます』と言うが、本当に皆が、年が明けることをめでたいと思っているのだろうか」と聞いたのだ。40代の私でさえ、年が明けることが楽しみでも、特段めでたくもないのに、たとえば80代、90代のご高齢の方々は新年をどういう気持ちで迎え、そして、何故祝うのか、皆目わからなかったのだ。すると、その人は、「年が改まると、一度チャラにできるからね」と呟いた。

 そうなのだ、日々だらだらと生きていれば、ささやかな楽しいことがある一方で、嫌なことや、忘れたい出来事もたくさん身に降りかかってくる。しかし、365日という一括りのなかで年が改まれば、自分の気の持ちようによっては再スタートを切ることが可能であるし、過去の自分を「まっさら」にすることもできる。その意味で誕生日も一つの節目だし、4月1日という新年度の始まりも大きな節目になるということだ。

 さて、さまざまな節目が存在するなかで、4月というのは、多くの日本人にとって特別な意味を持っている。桜の老木たちが薄紅色に染まりだすと、「また今年も桜の季節になったのか……」と無頓着な私も感慨が深くなる。

 けれど、今年の4月は浮世離れしてふわふわと美しい桜に見惚れている余裕はないかもしれない。空蝉の世では、消費税が5%から8%に増税される。厳しい時代へと突入していくのである。

 消費税の増税対策として、各企業は消費欲が減退しないようにさまざまな経営努力や準備を怠らない。食品のパックを従来の半分の量に小分けして、増税感を消す工夫や、カップラーメンの器をほんの少し小さくするなど、ありとあらゆる知恵を絞って対応している。事前に施設をリニューアルして、料金アップを実現しているレジャー施設もある。民間企業は増税によって鋭く鍛えられるのだろうが、一方、政治家や行政は税の使い方について、もう少し精度を高めていかないと、民間企業や一般生活者に対して申し訳が立たないだろう。テレビニュースは、企業や商店の血の滲むような努力を紹介するのはいいが、国の税の使い道や方針について詳しく伝えないかぎり、その報道はあまり意味がない。

 税金は使い方によっては、生きもするし、死にもする。

 消費税が5%から8%に増税されることで、従来と同じ商品やサービスを今後も提供するならば、3%分消費者が支払う料金が値上がりする。また、料金を同じにするならば、3%の増税分の内容が薄くなるか、減ってしまう。だが、サービス業ならば、コストを掛けずに商品力を上げることができる。人による「おもてなし」のサービスを付加価値にし、増税を忘れさせるくらい強いリピーターにすることも可能だ。増税した分だけ、消費者の選択眼は厳しくなる。一層、消費者の心に寄り添うことが必要だ。さまざまな業界で創意工夫がなされるなかで、観光業界も競争に負けずに、むしろ攻勢に出てほしいと思う。

(編集長・増田 剛)

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