テーマは「観光再生」 日中ツーリズムサミット、今年はオンライン開催に(CJTC)
2020年12月21日(月)配信
日中ツーリズムビジネス協会(CJTC)は12月18日(金)、日中間のツーリズムビジネスの再開を目指し、東京都内で「日中ツーリズムサミット2020」を開いた。3回目の開催となる今年は、新型コロナウイルスの影響からオンライン形式で開催。日中両国の旅行業界関係者らが一堂に会し、オンライン上での交流を通じて日本の魅力を中国に発信した。
主賓あいさつを行った中国駐東京観光代表処の王偉首席代表は、コロナ禍で旅行業のデジタル化が急務であると考えさせられたと振り返る。「これから発展していくためには、グレートアップをしなければならない。日中両国の旅行業界の皆で考えなければ」と強調。あわせて、「2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、それに合わせるような商品造成と未来の案を立てるところに力を入れるべき」と呼び掛けた。
同じく主賓あいさつを行った日本政府観光局(JNTO)の蜷川彰理事は、コロナ禍で蒸発したインバウンド(訪日外国人旅行)を振り返り、「日本全国の観光資源の魅力は決して失われたわけではない。感染症収束後のインバウンドに可能性が秘められていることは何も変わっていない」と語った。そのうえで、「ウィズコロナ時代の新たなニーズを踏まえた地域の魅力ある体験型コンテンツを効果的に発信していくことが重要。終息後になるが、コンテンツやアクティビティで季節ごとに楽しむ訪日旅行をコンセプトに、地方への誘客をはかる大規模キャンペーン計画の準備を進めている」と伝えた。
会場あいさつを行ったJTBの治福司執行役員は、日本政府にさまざまな提言を行った際に確認したインバウンドの段階的施策2点を説明した。「1つ目は、感染状況が落ち着いている国・地域からビジネストラック(短期出張者用計画)に準じた貿易処置を徹底のうえ、管理された小規模分散型パッケージツアーを試行的に実施する。2つ目は、安全安心への取り組みに対する情報発信による訪日プロモーションの実施」。MICEのようなイベントも、「東京2020」開催前の実証実験をかねての実施を期待した。
□中国の牽引者が講演、日中の旅行市場を語る
基調講演では「アフターコロナの観光再生」をテーマに、中国の観光業界を牽引する3人がそれぞれの視点で語った。
オンライン旅行会社のTrip.comグループの王韋副総裁は、「コロナ収束後は往来の交流が活発になると想定し、特定した領域では素早いV字回復も考えられる」と指摘。中国観光市場の回復、コロナ後の旅行消費者の心理、訪日マーケットの変化に対応した同グループの戦略を説明した。
「コロナ初期で速やかに『キャンセル無料保証』ポリシーを打ち出し、旅行マーケットの回復に向けて準備した。回復を加速させるため、中国各地とバラエティー豊かな商品をセット式に提供し、旅行ニューノーマルへの方向転換をサポート。最大限に旅行者の消費意欲を刺激し、業界全体の回復を目指した」と伝えた(王副総裁)。
旅行業界に特化した商談会システムを持つDragon Trailの曹志剛CEOは、中国市場で行ったコロナ禍における旅行意向に関する調査結果を発表。このほか、中国と日本市場の海外旅行会社間や、消費者とのコミュニケーションを深めることの重要性を語った。
コロナ禍にできることについて曹CEOは、「新しいマーケティングというインフラの仕事がたくさんある」と指摘。「画像や動画を含むホームページの更新が足りていない。中国の提携先は良質な内容をずっと探している」と伝えた。
中国交通運輸協会クルーズ・ヨット分会の鄭煒航常務副会長・事務局長は、今後のクルーズ運航再開に向けて最初にすることは、乗客の心の不安を取り除くことと強調。クルーズ再開のガイドラインを検討し、安全性に関するオンラインセミナーや、技術に関するオンラインフォーラムなどを行ったと振り返った。
鄭常務副会長・事務局長は、今後の日中間のクルーズ旅行に向けて4つの提案を行った。①日中連携でクルーズ観光推進委員会の設立②日本でクルーズツアー会議の開催③日本の各クルーズ港湾都市と観光代理店が本寄港目的地の紹介及び観光資源の計画的な紹介④日中クルーズ観光事業報告書の毎年の発行――。
□地域DX推進の討論や、オンライン商談会開く
パネルディスカッションでは、アフターコロナの観光再生に向けて、日本地域活性化に向けたDX推進ポイントについて討論が行われた。登壇ゲストは、JTB総合研究所の熊田順一首席研究員、やまとごころの村山慶輔社長、バイドゥの張宇弛広告マネージャー、ネットスターズ金融推進グループの浅野寿夫チーフディレクターの4人。モデレーターを、CJTCの王璇理事が務めた。
討論では、地域DX推進の必要性や、ウィズコロナ・アフターコロナにおけるDX推進の最新動向と事例共有、目標・ゴールなど、それぞれの立場で議論を交わした。
後半では、日本の観光関係者が中国の現地旅行会社とオンライン形式での旅行商談を開いた。国境を越えた移動再開に向けた積極的、具体的な商談の場が提供された。