新マルチタスクで人材育成 長野県・あぶらや燈千 宿泊業の生産性向上シンポジウム①
2021年2月3日(水) 配信
観光庁と日本生産性本部は2月2、5、9、16、18日の全5回で、宿泊事業者の生産性向上に向けての取り組み事例を紹介する「宿泊業の生産性向上シンポジウム」を行う。2月2日(水)に開かれた第1回シンポジウムでは、長野県・燈火、旬遊の宿 あぶらや燈千社長の湯本孝之氏が「新マルチタスクオペレーションの再構築と人材育成」をテーマに講演を行った。
冒頭、湯本氏は昨年の緊急事態宣言が発令された際、「Go Toトラベルキャンペーンの発表もなかったこともあり、売り上げの見通しがまったくつかない状態だった」と振り返った。
一方、施設が休業しているなか、「5月は週4回×4週の、計16日間で全社員研修を実施した」と紹介。6月は週末のみに営業し、平日は全社員研修で質の向上に取り組んだ。
組織は小型化し、少ない人数でも最大の利益を出せる体制を考え、全体最適化後の新しいマルチタスクを取り入れた。
以前のマルチタスクは「フロント&仲居」と「内務&調理」だったが、緊急事態宣言後は「予約&フロント」、「調理&仲居」、「内務&デシャップ」を新たに加えた。
また、人材研修・CSアップ研修の一環として、調理の仲居接客や予約のフロント接客、機械設備の技術研修など、「誰でも回るような組織体制」を目指して研修や教育を行った。
研修の結果は、スキルマップを毎月全社員で確認し、PDCAサイクルを用いてレベルアップをはかった。レベルアップはそのまま評価に反映した。
そのほか、社員の意識改革に向けて、湯本氏は「全員参加型組織を謳っている。社員全員に経営感覚を持ってもらうように、マネジメントゲーム研修などを受けてもらった」と語った。社員一人ひとりの利益、経営、CSに対する意識の向上を目指した。
新型コロナウイルス禍での取り組みの結果、2020年上半期(6~11月)の営業利益が、前年同月比で約500%増の3700万円(前年同月は619万円)となった。
今後の課題として、経営理念とビジョンを社員全員に浸透させ、人材の定着化をはかる。また、DX化に取り組み、ソフトウェアを共有(API連携)して業務効率を向上させる。そのほか、「リスクヘッジを踏まえた新規事業にも取り組んでいく。社員が働きやすい職場環境づくりにも尽力し、賃金や休日取得率をアップさせ、設備や人材に投資していく」と展望を語った。