大胆なデジタル化と動画を使った効率的な研修 滋賀県・おごと温泉 湯元舘 宿泊業の生産性向上シンポジウム④
2021年2月16日(火) 配信
観光庁と日本生産性本部は2月中、宿泊事業者の生産性向上に向けての取り組み事例を紹介する「宿泊業の生産性向上シンポジウム」を計5回行う。2月16日(火)に開かれた第4回シンポジウムでは、利他グループのおごと温泉 湯元舘(針谷了代表、滋賀県大津市)が「生産性向上と多様な働き方の実現に向けた業務棚卸、マルチタスク化に対応する動画マニュアルと連動したスキルマップの作製」をテーマに講演を行った。
同グループは、優秀な人材確保のためには高待遇が必要とし、さらにそのためには生産性の向上が不可欠だと考えた。講演では、湯元舘の上田文雄氏(取締役営業部長兼経営企画室長)が、「2019年から生産性向上に向けて改革を行ってきた」とし、取り組みを紹介した。
設備投資では、自動料理搬送システムや自動料理搬送ロボットにより各階、各部屋への料理の配膳を効率化した。また、今までホワイトボードに記入していたり、内線を使って連絡を取り合っていた業務にPMSを導入した。調理ボードやオーダーエントリーシステム、デジタルサイネージ、各スタッフのハンディー端末などに活用されている。
部署改革では、調理部の提案で、大量に炊いておひつに分けていた従来のやり方から、小さな土釜で一人ひとりに提供し目の前で炊く、「炊飯器の小ロット化」を進めた。
新型コロナウイルス禍での取り組みとして、キャンセルや日程変更、Go Toトラベルの問い合わせなどで予約係の負担が大幅に増えたことから、公式HPにチャットボットを導入した。昨年11月から1カ月で510人の利用があった。
また、人材育成やマルチタスク化に向けて、動画でマニュアルを作成し、ユーチューブで限定公開をしている。リンクアドレスを持っているスタッフは自宅にいても動画を視聴できるため、何度でも復習ができる。
同グループの旅館「湯の花温泉 京YUNOHANA RESORT 翠泉」の堤正和氏は、「スキルマップもマニュアルも、教える側の頭の中に必ずあるものだが、それぞれの捉え方や教え方が違う場合がある」と抱えていた問題点を指摘した。改善策として、「動画で統一することで誤解を減らす」、「教育者と一緒に動画を見ることでその都度補足してもらう」ことを挙げ、「研修をするにあたって一番近道だと思った」と振り返る。
最後に「社員の成長・活躍の環境を整えることが、生産性の向上につながる。多様な働き方の提案を続けていきたい」と力を込めた。