〈旬刊旅行新聞2月11・21日合併号コラム〉店舗を訪れる理由 専門家の“ユーザー目線”からの助言
2021年2月18日(木) 配信
昨年末にホンダのハンターカブ125㏄を納車した三男坊が、今度は「ツーリングキャンプをやる」というので、近くのアウトドア用品専門店に出掛けていった。
テントや寝袋、ナイフなど、“ぼっちツーリングキャンプ”に必要なものをそろえる買い物だがテント張りについては、まったく素人なので、店内に展示されたテントを眺めるだけでは、決め手がない。このため、店員に「どれが丈夫で、組み立てやすいのか」などの説明を受けた。
我われが訪れたアウトドア用品専門店では、スタッフがテントの張り方を一から実演してくれた。
ナイフの扱い方を説明してくれたスタッフも、「単に研修を受けただけ」といったレベルではなく、何度も自分で経験し、修羅場を潜り抜けたことで体得したノウハウをさりげなく教えてくれ、選ぶ際に大変役に立った。
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私は若いころから、買い物をするときに、店員にアドバイスしてもらうことを極端に避ける傾向があった。
とくに、洋服屋さんでは、強引に試着させられ、どう見ても似合ってもいないのに「とても似合っています」などと“店側の経営的な目線”で言われ、断れなくなって買ってしまい、何度も後悔した経験があるからかもしれない。
しかし、私も年齢と数々の失敗を重ね、大きな授業料を払い続けるうちに、自分が知らないことは専門分野に長けた人(プロフェッショナル)の助言を聞いた方が、結果失敗が少ないことに気づき始めた。
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近年は、店舗よりも、インターネットでの販売が主流になりつつある。この傾向はコロナ禍でさらに加速しているのだろう。自分が熟知している製品や、日ごろよく買うものはネット通販で購入する方がラクで、問題もない。だが、テントやナイフなどは、知識が少ないまま買ってしまってから後悔するのもいやだ。
実際に訪れたアウトドア用品専門店の店員からは、テントやナイフのメンテナンスのやり方などを懇切丁寧に“ユーザー目線”で説明していただいた。
こんな話をタダ(無料)で聞けるなんて素晴らしいと思い、さまざまな質問をしながら一生懸命に聞いた。
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最近は、旅先でもまず観光案内所を訪れて、本当に美味しい店をスタッフに聞くようにしている。最初はパンフレットを見ながら説明してくれるが、「地元の人がよく行く、安くて美味しい店はどこですかね」と小声で聞くと、そっと教えてくれることが多い。その土地の名物を味わうことを主目的に訪れているので、大失敗は避けたい。最終的には自分の勘が頼りなのだが、地元のことは、やはり地元の人が一番知っている。旅人は常に謙虚でなければならない。
また、旅先の表通りではなく、裏通りにひっそりとある小料理屋を訪れることも増えた。地元の食文化などを、地酒を飲みながら話すことが楽しい年齢にもなってきた。
日々の生活でも、商店街の小さな魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんで買う方が豊かな気持ちになる。これもプロによるさまざまな知識やノウハウが得られる楽しみがあるからだ。
今度、引っ越すとすれば、第一条件に「活気に満ちた商店街のある町にしたい」と思っている。
(編集長・増田 剛)