愛知県・幸田町 成瀬敦町長に聞く “どうする幸田町” ロケは他地域との協力も不可欠
2021年3月23日(火) 配信
有名な観光施設がない、知名度が高くないなどの悩みを抱える地域が、観光業でまちを盛り上げ地域を活性化する手段になると期待するロケツーリズム。コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。愛知県・幸田町も、メディアを活用し全国に情報発信を行うことで、町の認知度向上を目指す自治体の1つ。成瀬敦町長に取り組みや周辺地域との連携などを聞いた。
――幸田町はどのような町ですか。
幸田町は、温暖な気候と豊かな自然に囲まれた町です。名古屋までJRで約45分、豊橋へも約20分とアクセスも良く、住みやすい町として、人口が右肩上がりに増加しています。
日本一の生産量を誇る「筆柿」をはじめ、イチゴやナスなどの農産物が多く生産され、近年では、特産品を使用した新メニュー開発や、地元消防団のPRを目的として開発された「幸田消防カレー」の商品化など、町の農産物を生かした新事業にも積極的に取り組んでいます。
観光面では、「幸田しだれ桜まつり」や、「幸田彦左まつり」など、1年を通してさまざまなイベントが開催され、毎年多くの人でにぎわっています。
――魅力があふれるまちがロケツーリズムに取り組まれた理由は。
毎年多くの人々でにぎわう一方、近隣の市町と比較しても認知度が低く、観光地としての誘客に苦戦しています。そこで、「幸田町の魅力を全国の人々に知ってもらう」手段として、2018年からロケツーリズムの取り組みを始めました。
幸田町には、ロケツーリズムを積極的に進めているほかの自治体とは違い、有名観光地はありません。そこで、メディアを活用して全国に情報発信を行うことで、町の認知度向上をはかります。そして、ドラマや映画をきっかけに、ファンに町へ足を運んでもらいたいです。また、特産品などを使用したグルメを活用し、広い視点での地元活性化を目指しています。
――幸田町は、何を武器に、ロケ誘致を進めていますか。
現在も使用している小中学校9校でロケができるので、制作者からの問い合わせが多いです。また、官民が連携してロケ誘致を行っているので、消防署もロケ地として提供できます。このように、コンパクトな町だからこそできるフットワークが武器ですね。
今年度は幸田町初となる連続ドラマの撮影が町内各所で行われ、ドラマ内のさまざまなシーンで町が登場する予定です。
――ロケ誘致を通じて、町はどう変化していますか。
官民一体でロケ誘致を実施し、幅広い周知を心掛けることで、町全体に認知され、幸田町の新しい観光事業としての期待度も高まっていると感じています。また、特産品を使ったロケ弁開発を手掛けたことで、町内の飲食店などの活性化にもつながっています。
一方で、首都圏からのアクセスなどさまざまな課題もあるので、継続してロケ誘致を行うには、受入体制の強化や、新しいロケ地の発掘など、他団体にはない取り組みを進めていく必要もあります。
――ロケ誘致で盛り上がっている地域は、首長が先頭に立ち、自らも積極的にロケ誘致に関わっています。成瀬町長はいかがですか。
特産品を使用したロケ弁開発など、撮影スタッフへのおもてなしを意識し、先頭に立って町のPRに取り組んでいます。
1人でも多くの町民の方に、町の魅力度アップの必要性に気付いていただけるようなおもてなしの心掛けを、これからも私なりの心構えとしていきたいです。
――近隣地域との連携も、観光面では重要になります。多くの作品が撮影されている蒲郡市など隣接するまちとの連携も考えられていますか。
近隣市町にも魅力的なロケ地があり、直近にあったドラマロケでも、周辺地域と連携して撮影が行われました。海や高いビルなど、幸田町にはないロケーションでの撮影は、周辺地域の協力が不可欠となります。本町に限らず、各地域がロケで盛り上がるよう、今後も地域間の連携を強めていきます。
――思い描く未来の幸田町のロケツーリズムについて教えてください。
他団体との協力体制などを強化し、ロケをきっかけに、地元中小企業や飲食店などの活性化につながるよう、今後も積極的にロケツーリズムを推進します。コロナ禍であっても、新しい日常を迎え入れていくため、「人と自然と産業との調和」を理念に、「みんなでつくる元気な幸田」をテーマに「人」「場所」「出会い」を楽しくつなぎ合わせていきたいですね。
――ありがとうございました。