訪日再開へ道筋確認 管理型旅行の内容も共有 JATA経営フォーラム分科会C
2021年3月29日(月) 配信
日本旅行業協会(JATA、坂巻伸昭会長)は2月26日(金)、オンラインで「第29回JATA経営フォーラム2021」を開いた。分科会C会場では「訪日インバウンド復活へ向けたロードマップ」をテーマに、11月にビジネストラックとして来日したウィーンフィルハーモニー楽団の管理型旅行の具体的な内容を確認したほか、受入再開までに求められる考え方などを議論した。
冒頭、JNTO企画総室の蔵持京治企画室長は現在の取り組みとして、海外に向けて日本の魅力を忘れないでもらうための情報発信や、再開後に日本を訪れてもらえるよう各国政府に働き掛けていることを報告した。
蔵持室長は「とくに感染防止対策が求められる。アピールのための素材は完成間近」と伝えた。一方、受入側の考え方として「1カ国ごとの感染状況に合わせ、悪化した場合には、受け入れを中断するべき」との考えを示した。
具体的な国として、2月現在では、これまで少なかったマレーシアの感染者数が増加したのに対し、ドイツは減少傾向にあることなどを挙げた。
□ホテルと1週前交渉 チェックインは車内
次にウィズコロナの訪日旅行に向けたワーキンググループ委員を務める東日観光営業第二部の中山眞一部長が管理型旅行の参考として、昨年11月にオーケストラの演奏会のために、ビジネストラックで来日したウィーンフィルハーモニー楽団の滞在のようすを伝えた。
東日観光はホテルの1フロアを貸し切りにしたほか、ロビーで他の利用者との接触を避けるために、チェックインはバス車内で実施した。特別に許された新幹線での移動の際には、東日観光の社員20人が同楽団を取り囲みながら動いた。
また、同楽団からは感染状況を間際まで見極めたい意向から、渡航の出発が正式に決定した日付は、1週間前だったという。
ホテルとの交渉は「来日が確実になってから行えた」とし、今後のフロアや食事会場の貸し切りの交渉などについては、「通常より短い期間になるだろう」と強調した。
JATAの訪日委員会副委員長を務め、JTBグローバルマーケティング&トラベルの黒澤信也社長は昨年10月に旅館・ホテルや観光施設など受入側を対象に実施したアンケート結果について話した。
96%が国際的な往来再開に向けた運用ルールの下で、往来再開を望んだ。このほか、希望する旅行スタイルは旅程管理型旅行が最も多かった。
□日本に安全求める声 〝感染しない対策を〟
ディスカッションではこれまで登壇した蔵持室長と中山委員、黒澤副委員の3氏に加え、日本旅行の緒方葉子訪日旅行営業部長が登壇した。モデレーターはJATAの訪日旅行推進委員会で東武トップツアーズの磯康彦執行役員が務めた。
黒沢氏は受入再開後の日本政府の方針として「陰性者のみを受け入れること」とし、「日本で感染しない対策の構築が訪日を促進する最も基本になる」との考えを示した。
さらに、今後自由行動ができるまでは「コンビニの店員や路線バスの運転手など訪日客と関わるすべての人が、陰性であることを証明することが求められる」とした。
中山氏はウィーンフィルハーモニー楽団員が入国の4カ月前から健康管理に気をつかったことを伝えた。そのうえで、「楽団員は旅行中に感染することを大変恐れていた。ホテルの従業員や移動中に接した駅員など受入側の健康管理について問う声もあった」と振り返った。
緒方執行役員は旅行商品の営業について、日本には初めて来る人が多く人気の東京と京都を避けて販売することの難しさを話した。今後の販売には「(人気観光地は)混雑時間を避ける提案をする必要がある。観光の基本である人との触れ合いは、混雑が少ない地方で行うようにしたい」と話した。
蔵持氏はニューヨーク(アメリカ)に住む妻が帰国した際の話として「電車での混雑に恐怖を覚えた」と紹介した。
ソーシャルディスタンスへの意識が高い外国では、電車が混雑しないとし、「危険を冒してまで移動する人は少ない。日本は安全であることを発信する必要がある」と意見を述べた。
磯氏は最後に「多くの訪日客向けのアンケートで、日本は訪れたい国とされている。一方で、安心・安全を求める声は癒しや快適さを抜いて最も多い。今後は感染防止策の発信が最も重要になるだろう」と総括した。