〈旬刊旅行新聞4月1日号コラム〉遠い未来に想いを馳せる 桜の幼木にきれいな花が咲いていた
2021年4月1日(木) 配信
3月に暖かい日が多かったせいか、桜の開花が早かった。家から30分ほど離れている場所にきれいな桜並木の道がある。毎年、そこにバイクで見に行くことを楽しみにしている。
桜並木をクルマで通過するのと、バイクでゆっくりと見上げながら通り過ぎるのでは、まったく感動の度合いが異なるから不思議だ。
今年最初に訪れたときは、まだ開花前で若干フライング気味だった。そして2回目に訪れたときには、まだ十分に咲いていない木もあれば、すでに葉桜になっている木もあった。なかなか満開時期に桜と出会うことは難しい。
そのなかで、1つ大きな発見があった。これまで見慣れた桜並木から少し離れた公園に、幹が人間の腕ほどしかないような幼い桜の木が薄桃色の花をたくさん咲かせていたことだった。
桜を見る際、無意識のうちに人は見上げる習慣が身についているが、幼木の桜の花は、人間の目の位置よりも低いところにもあり、目前にきれいに咲いているのに気づかないこともあるのだな、と思った。
木が育つには、長い年月を必要とする。華やかさを誇っていた老木も、やがては朽ちる。世代交代がしっかりと行われていなければ、桜並木は衰退し、途絶えてしまう。
自分の背丈とさほど変わらない、たくさんの桜の幼木がきれいな花を全身に咲かせている健気なようすに、遠い未来に想いを馳せ、すごく安心した。
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昨年はコロナ禍ということもあり、バイクに乗ってロングツーリングをすることはなかった。休日に近場の湖や、海辺まで走り、自然に囲まれたところで、缶コーヒーを飲んで帰るということが気分転換にもなり、精神安定の役割を果たしていたのだと思う。
先日、バイクを買った店でリアウインカーを後方のテールランプの位置まで移設してもらった。これによって、大きな旅行用サイドバックも搭載ができるようになり、ロングツーリングも可能になった。
私は元来、長い旅行でも荷物が極端に少ない性質で、誰も褒めてくれないが、密かな自慢である。だから、サイドバックも必要ないと言われれば、必要ないのだが、「常に出陣の準備ができているという姿勢が素晴らしいではないか」と自分に言い聞かす。
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「コロナ禍で行きたい旅行先が増えた」という調査結果も目にしたが、私も行きたい旅行先が増えすぎて困っている。
例えば、バイクに数日分の着替えだけを入れたバックを積んで、四国を一周してみたい。うどんを飽きるほど食べながら、四国カルストの「天空の道」を走ることを妄想してみたりする。
東北道を一直線に北上し、その後、日本海側を青森県から、秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、兵庫、鳥取、島根、山口と海沿いの細い道路をあちこち寄り道しながら南下していくルートもいい。日本海側はバイクの1人旅がとても似合う。
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国土交通省はこのほど、バイクの高速道路料金を、来年4月から普通車の半額に割引する方向性を示した。現行料金は軽自動車と同じ料金で、普通車の8割だ。割高感や不公平感もあった。土日・祝日限定など、さまざまな条件が付きそうだが、バイク旅には大きな追い風となる。
(編集長・増田 剛)