20年度宿泊業倒産7年ぶりに100件超 新型コロナ関連倒産は68件(東京商工リサーチ調べ)
2021年4月12日(月) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2020年度(20年4月~21年3月)の宿泊業倒産は、前年度比71・6%増の127件に急増した。このうち、新型コロナウイルス関連倒産は68件で、宿泊業の倒産の過半数(53・5%)を占めた。13年以降7年ぶりに100件台に達したが、負債総額は662億8500万円(同16・1%減)となり、2年ぶりに前年を下回った。平均負債総額は5億2100万円。
20年度の宿泊業倒産は、原因別では「販売不振」が86件で、構成比は67・7%と全体の約7割を占めた。
負債額で見ると、10億円以上が18件、5億円以上が19件、1億円以上が57件、5000万円以上が11件、1000万円以上が22件だった。中規模以上の倒産が増加し、とくに5億円以上の倒産が前年度比71・4%増となった。
地区別では、9地区すべてで宿泊業の倒産が発生した。長野県と静岡県が各10件ずつ発生するなどして、中部地方の29件が最多だった。次いで関東26件、近畿24件、東北15件、九州13件、中国10件、北陸3件、北海道6件、四国1件となった。全国9地区のうち、北陸以外の8地区で増加した。
同社はこの結果について、「新型コロナ関連倒産の第1号発生から1年経過してなお、宿泊業は経営破綻の続出を避けがたい状況だ」と指摘する。今後の見通しとして「業態転換も視野に入れた経営支援が必要となるかもしれない」とした。
一方、20年度の旅行業の倒産は23件(前年度は27件)と、過去20年間で最少件数となった。このうち、新型コロナ感染拡大が原因の倒産は13件発生し、旅行業全体の構成比56・5%を占めた。
倒産件数に対し、負債総額は295億6100万円(同16億8200万円)と、過去20年間で最大となった。旅行業の倒産で、平成以降で最大となったホワイト・ベアーファミリーの負債278億円が、全体の負債総額を押し上げた。
新型コロナ感染拡大で海外渡航の制限や国内の移動自粛が続くなか、大手旅行会社も最終赤字の発表や人員を整理するなど、「旅行業はコロナ禍のダメージが大きい」(同社)。
20年度の倒産件数は最少記録を更新したことで、同社は「政府や金融機関の資金繰り支援策が功を奏した」と見ている。しかし、コロナ禍発生から1年が過ぎ、コロナ関連融資の返済期限を迎えることで、過剰債務を抱えている企業の「あきらめ倒産」が増える可能性を示唆した。