外客2千万人新時代へ、VJ大使が課題検討
国土交通省関東運輸局は4月25日、「VISITJAPAN大使シンポジウム」を、日光東照宮客殿(栃木県日光市)で開いた。ビジットジャパン(VJ)大使とは、外国人旅行者の訪日促進に向けて優れた取り組みを行っている民間人を、観光庁が任命しているもので、現在58人が任命されている。当日はインバウンド2千万人新時代を念頭に、14人のVJ大使が現状の課題や打開策を話し合った。
基調講演は、日本コンベンションサービス・MICE都市研究所所長の廣江真氏が「次世代型のインバウンド」をテーマに行った。廣江氏は、観光と現在の製造業の姿を重ね、「かつて日本が得意とした高機能・高デザイン・高価格型は欧米へシフトし、日本製品は安価な方向へ流れている」と指摘。統合化や各所との連携を行いながら「まずは顧客となるターゲットを研究し、商品開発力を高めていくことが重要」と見解を述べた。
パネルディスカッションでは、4人のVJ大使が登壇。大使の1人、秋葉原観光推進協会理事の泉登美雄氏は、電気街のイメージが強かった秋葉原を観光でまとめ、地域のブランド力向上に努めてきた。前職はメーカー勤務で、営業として全国を回った経験から「外から秋葉原を見る目」を養ったと語る。「中からは見えにくいオンリーワン、ナンバーワンになれる部分がわかった。地域や異業種と連携して取り組むことで、新たな展開も見えてくる」。
また、交通機関の乗り放題チケットの海外展開に取り組んできた、元スルッとKANSAI副社長で大阪市交通局の横江友則氏は「移動手段と観光情報は密接に結びついている」としたうえで、「観光資源側から発信する情報と観光客のニーズに、ミスマッチが生じていることもある。今後はSNSで観光客から発信された観光情報を得て、別の観光客が追体験をしに来るという構図をより活かしていきたい」と構想を述べた。
昨年、1年間の訪日外国人旅行者数は1千万人を突破し、観光庁は年間2千万人を次なる目標として掲げる。2020年東京五輪の開催決定も追い風に、関東圏はさらなる外客増加に期待がかかるが、「他エリアに比べ広域観光の意識が希薄」という課題も残る。
又野己知関東運輸局長は「オリンピック時に東京だけが訪日客の受け皿になるのではなく、広域観光の連合体の制度設計をはかりながら、関東圏として受け入れ体制を整えていかなくてはならない」と言及する。