「旅館コンサルタント大坪敬史の繁盛旅館への道(62)」 コロナ禍におけるアニバーサリー需要
2021年5月21日(金) 配信
緊急事態宣言が繰り返し発出される状況では、日本全国で遠方の旅行ができる「空気」ではありません。
宿泊施設でも「徹底した衛生対策」を実施し、公共交通機関でも同様のことが行われているので、都会の街中を歩いているより、旅行に行く方が、感染対策になるのかもしれません。
一部地域や企業の中には「他県からのお客様は、絶対に来てほしくない」という意見もあると思います。ただ、永遠にお客様がいない(少ない)状態となれば、経営は成り立ちません。
遠方のお客様に抵抗を持たれる地域や企業の皆様に、検討いただきたいのが「アニバーサリー旅行」です。
例えば、「新婚旅行で海外旅行を計画していたけれど、この状況ではとても行くことができない」というのが実情でしょう。
関西のある高校では、修学旅行の本来の予定がフランス「パリ」だったのが、長崎への1泊2日旅行に変更となり、さらにそれもダメで、結局は滋賀県への日帰り旅行で落ち着いたと聞きました。生徒の皆さんは、大変残念な思いだったと思います。
長崎、滋賀県の旅行も十分魅力的な旅行でありますが、若い人たちにとって「遠方」への旅行は「憧れ」でもあります。
大切な人生の節目である「新婚旅行」であっても、コロナ禍では「遠く」へ行くことには抵抗があります。
この発想は地方に行くほど強くなり、「県境を越えた旅」ということに大きな抵抗があります。
そんななか、当社のクライアントで、アニバーサリー系のプランを展開する旅館から「最近、地元のお客様がハネムーンで泊まっていただいた」という話を聞きました。
また、家族の「祝い旅」や親族の集まりなど、今まで越県していたのが、県内での宿泊や日帰り旅行が増えているようです。
宿泊者のアンケートには「コロナでふさぎ込んでいたが、宿泊できて元気が出ました」「遠くに行くのは抵抗があり、この宿に泊まりましたが、近くにこんな良い宿があるとは知らなかった。また来ます」。
さらに「感染対策が万全で、安心して家族と過ごすことができた」など、非常に好意的な評価が多く、館内に滞在中も大変喜ばれたようです。
こういう客層だけで客室稼働率を上げるのは、特徴のある宿しか難しいでしょうが、中小旅館でも、多くのお客様がご来館いただければ、館内の雰囲気も良くなり、何よりスタッフのモチベーションも上がります。
コロナ禍ではあっても、それぞれに「人生の節目」を迎えます。そんな時に、遠方への旅は難しいけれども、地元の旅館・ホテルで泊まって過ごすというニーズはどの地域もあります。
Go Toトラベル再開の見通しが立たないなか、非常に厳しいときですが、今だからこそ、地元アニバーサリー需要の掘り起こしを検討されてみてはいかがでしょうか。
コラムニスト紹介
旅館コンサルタント 大坪 敬史 氏
大手旅行会社での実務業務を経て船井総合研究所入社。インターネットを駆使したWeb販促&直販売上倍増&即時業績向上ノウハウには定評があり、数多くの宿泊産業の業績向上に貢献。観光文化研究所を設立し代表取締役。