野口観光が開業50周年、野口秀夫社長に聞く
野口観光(野口秀夫社長)は今春、開業50周年を迎えた。北海道・登別温泉から出発し、多店舗・多客層化へ展開した経緯や、先代の故・秀次氏からの学び、次の50年に向けての抱負を野口社長に聞いた。
(聞き手=本紙社長・石井 貞德、構成=鈴木 克範)
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14年サイクルで転機
1964年、北海道の登別温泉に43室の「登別プリンスホテル」を開業、今春50年の節目を迎えた。振り返ると、79年の「洞爺プリンスホテル」開業は多店舗展開の礎となった。92年には、最初の建物(登別プリンスホテル)を取り壊し、「石水亭」を新築。06年には高級宿「望楼」ブランドを新設した。
14年ごとに転機を迎え、対応してきた。次は東京オリンピックが開かれる2020年。次世代が商売しやすいように、組織や考え方の整備が急務と考えている。
先代との仕事は幸運
父であり先代・社長の秀次は、仕事において難しい言葉は1つもなかった。易しい表現だが、常に本質をついていた。いつも時代や環境に順応し、最後まで脱皮し続けた。
99年にバトンを受け、社長に就いた。先代は代表権のある会長に。以後は経営の現場から一歩離れ、報告を聞く程度。「情報は提供するが、決めるのはお前の役目」と見守ってくれた。
頭の柔らかい人だった。商売も好きだった。人間力もあった。あの経営者の下で仕事ができて幸運だった。
多店舗・多客層化推進
さまざまな影響にも耐えうる企業体質を築くため、「多店舗化」(16施設)に続き、「多客層化」に力を入れている。これまでの主力だった値ごろ感のある宿に加え、高品質・高満足の「望楼」ブランド。さらにその中間、「乃の風リゾート」に代表されるアッパーミドルの展開だ。1地域に、複数施設で進出しているところはリーズナブルな2館から、1施設をアッパーミドルに改修するなど、差別化をはかりたい。今秋、着手する「湯元名水亭」のリニューアル(来春開業予定)もその一環だ。
人を育てて次の50年を
働く環境や評価について正当な仕組みをつくることで、優れた人材が集まるようになった。ここ数年は、研修など人材育成に注力している。続けることで、宿泊業界の社会的認知の向上にもつながると思う。これからは宿泊単価と人員の掛け算ではなく、品質を上げ、価格に満足いただけるよう努力する。
コストパフォーマンスと経営。生き残りには双方が必要だ。50周年を機に、社是や経営理念の見直しもはかる。経営ができるグループをつくり、バトンをつなぎたい。