サービス連合、アフターコロナ時代における持続可能な観光の発展――探る 観光政策フォーラム開く
2021年5月25日(火) 配信
サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合、後藤常康会長)は5月18日(月)、オンラインで第6回観光政策フォーラムを開いた。トークセッションでは「2030年にむけてアフターコロナ時代における持続可能な観光の発展」をテーマに議論した。登壇者からの意見は、観光業で働く人の地位向上と、業界発展への提言につなげていく考えだ。
冒頭、津和崎宏児副会長は「観光産業は厳しい状況だが、地域への経済・雇用効果があり、日本の将来を支える産業だ。現況を踏まえ、観光業従事者の地位向上と、観光産業の持続的な発展を考える」とフォーラムの趣旨を説明した。
トークセッションの登壇者は、武蔵野大学特任教授の山内弘隆氏と東京女子大学教授の矢ケ崎紀子氏、観光庁観光戦略課課長の片山敏宏氏の3氏。司会は同連合副事務局長の矢野勇紀氏が務めた。
矢野氏は冒頭、サービス連合として、コロナ禍で雇用と事業を守るため、立憲民主党や観光庁などへ政策を提言してきたことを報告。そのうえで「アフターコロナに向けて、観光産業にとって重要なテーマを議論したい」と呼び掛けた。
コロナ禍の現状について山内氏は、「観光は戦争や外交問題などの影響を受けやすい。コロナ禍でも大きな影響を受けているがGo Toキャンペーンを通して、観光には底堅い需要があった」との認識を示した。
アフターコロナに向けては、「コロナ収束後、『必ず回復する』という期待感を持って観光産業を発展させてほしい」と話した。
矢ケ崎氏は「政府や地方自治体などが旅行を促した際、過去に経験がないぐらい急激に需要が回復する」と予測。その際には、オーバーツーリズムが発生する可能性があるとして「人気観光地に人が偏り、密にならないよう、(自治体は)今から“新しい魅力的な場所”を発信するべき」と述べた。
片山氏も「収束後、必ず需要が戻る」と見方は一致し、「密を避けるため、誘客多角化事業で地域コンテンツを約500カ所発掘した」とアフターコロナ対策を講じたことに言及した。
将来、需要拡大に期待が高まる旅を聞かれた矢ケ崎氏は、欧米で盛んだという心身を治すヘルスツーリズムを挙げ、日本でも広がっているとし、「癒し目的の旅行者が増えている」と説明した。
業界へのアドバイスとして、大学教授の立場から矢ケ崎氏は多くの学生が、観光業を将来転職する際に候補に捉えていることを明かし、「産業界は、観光業への就職を促すメッセージを出すべき」と強調した。
片山氏は今後、国内外の旅行者から新型コロナウイルスに対する安心・安全な旅が求められるとして、「感染症対策のナビゲーターとして活躍してほしい」と述べた。
3者の発言を受け、矢野氏は「観光業を発展させるヒントを得た。業界の人の立場で提言をまとめたい」と意気込んだ。