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【特集No.582】昼神グランドホテル天心 5年ごとに計画的な設備投資を

2021年5月31日
編集部:増田 剛

2021年5月31日(月) 配信

 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の8回目は、長野県・昼神温泉の「昼神グランドホテル天心」社長の今井竜也氏が登場。5年ごとの計画的な設備投資によって、時代に沿った旅館であり続ける考え方や、ハードだけでなく、オペレーションも変えていく設備投資のあり方を探った。

【増田 剛】

 今井:長野県・阿智村は近年、「日本一の星空」で有名になりました。昼神温泉は1973(昭和48)年に旧国鉄の飯田―中津川線新設に伴うボーリング調査中に私有地から温泉が湧出し、村が温泉権を取得して「健全保養型温泉地」の形成を目指しました。
 江戸時代の書物「信州伊奈郡郷村鏡」には、昼神に温泉があった記録があります。湯屋権現社が祀られていたり、「薬師」の地名もあったり、既に温泉が存在していたことが推察されます。
 73年から10年間で温泉宿は16軒(1600人収容)となり、20年間で26軒(3500人収容)へと拡大していきました。現在は若干減って19軒(3100人収容)となっています。

 内藤:どのような方が昼神温泉で宿を始められたのですか。

 今井:地元の人が旅館を始め、その後、村営の保養センターも作られました。また、当社もそうですが、地元企業が土地を買い、温泉権を村から得て、規模の大きい旅館を開いていきました。

 内藤:団体客を受け入れる大型観光旅館ということですか。

 今井:そうですね。㏗9・7の単純泉で、温泉の質が良く、旅行ブームによって隆盛してきた時期でした。80年ごろから地元有志による「朝市」が行われ、今では昼神温泉の名物となっています。
 2005年には阿智村と、旅館なども出資して「株式会社昼神観光局」が設立されました。18年には阿智村観光協会と合併して「阿智・昼神観光局」として、バスや物販、地域ブランド確立事業などを展開しています。
 団体客が減少し、個人客へと移行する12年に「日本一の星空阿智スタービレッジ事業」がスタートしました。初年度は6千人台だったお客様が旅行会社の協力もあり、近年は16万人の集客があります。

 ――それでは昼神グランドホテル天心の歴史を教えてください。

 今井:当館は1980年3月にオープンしました。隣接する飯田市の吉川建設がオーナー企業です。
 オープン時は収容240人ほどで昼神温泉では最大規模でした。当初は皆で布団敷きや片付け、洗い物をする素人集団の運営でしたが、次第に中京、関西エリア、そして関東からも宿泊客に来ていただくようになりました。
 1997年に新棟「天の館」をオープンしたのが転機となりました。38室から77室に増え、収容は2倍の480人に拡大しました。
 当時、私も支配人として出向していました。建設会社の子会社という関係から、「設備投資のタイミング」などの難しい問題がありましたが、周りの旅館が次から次に新設され、大型化するなかで、先代の社長(親会社の会長)が「どうせ設備投資をするなら、旅館の建物が建設会社の広告塔となるような良いものを造る」との方向で舵を切りました。
 バブル崩壊後の投資でしたので、坪単価も3分の2まで下がっていました。このため、当初計画の3分の2の売上で経営できる状況で、ハードルが少し下がりました。

 内藤:社長に就任したのはいつですか。

 今井:99年で45歳のときです。04年にも全面改築をしています。
 親会社が建設業と業種が異なるため、とにかく数字で示していくしかない。社長就任2年目から20年間、12カ月営業は黒字計上を維持しています。旅館経営で親会社から単年度ごとに黒字を求められるのは、結果として良かったと思っています。

 内藤:今井社長は計画的に投資サイクルを決めて実行されています。

 今井:ある勉強会で世界的なマーケティング学者フィリップ・コトラー教授の「もし、これからの5年間、現行のビジネスモデルに固執するのならば、その企業の生存は危うい」という言葉に出会いました。
 それまで設備投資について「どれくらいのスパン(期間)でやればいいか」、「どのくらいの金額をかければいいか」の判断に困っていましたが、コトラー氏の説を基に、「5年に1度ずつ何らかの手を加えていけば、時代に沿って変わっていける」と思いました。
 ただ、あくまでも当社は子会社という立場であり、建物は年々減価償却していくなかで、新たな設備投資の条件として「借金の総額が減っていくこと」という制約がありました。
 そこで「5年間で返済した額の半分を設備投資に回す」という方針を決めました。これを続けていくと、借金全体が減っていきます。……

【全文は、本紙1832号または6月7日(月)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】

 

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