大友啓史監督も登壇 ロケツーリズム協議会で島原市や幸田町など全国のロケツーリズムの好事例を共有
2021年6月1日(火)配信
ロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)は5月8日、リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)で今年初の会合を開いた。
緊急事態宣言下であることからオンラインでも併用し、会員自治体関係者や企業らが実績を共有。映画監督の大友啓史氏も会に参加し、制作者の目線から選びたくなるロケ地の条件や、誘致活動に際して大切なことなどを話した。
藤崎会長は、「コロナ渦でも感染症対策を万全にし、この時期でもできることをしっかりとやることが大切」と強調。「コロナが収束してから動き出しては遅いので、いかに工夫して成果に結びつけられるか、今からアフターコロナに向けて準備する」と開催の意図を語った。
長崎県島原市は4月1日、シティプロモーション課のなかに「ロケツーリズム班」を設置した。同課に属する他の班と連携し、観光や移住定住情報の発信などロケ実績をシティプロモーションにつなげることが狙い。4月20日から放送されている「キリンレモン」のCMでは、大三東駅が話題になるなど、ロケ実績の蓄積も進んでいる。また、東海テレビが制作した連続ドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」では、愛知県・幸田町の「町おこし」をテーマにストーリーを展開する回が放送された。町名の使用に加え、筆柿などの特産物が使用されたり、幸田町役場の職員が本人役で出演したりと、ドラマを通じた地域PRにつながったという。
番組で取り上げられた商品も人気を集めている。千葉県いすみ市の牧場で販売されているブルーチーズは、4月24日に放送された情報番組で紹介された直後から注文が殺到し、現在3カ月以上待ちとなっている。
企業側の事例では、協議会の会場であるリーガロイヤルホテル東京が、テレビ東京の番組に2週連続で取り上げられ、2日間合計82分23秒の放送時間で、広告換算効果2億9658万円になるという。
こうした事例発表に加え、「ロケナビゲーター」、「ロケエディター」の2クラスに分かれてのグループワーキングも行った。都市ホテルの販促担当者らが参加した「ロケナビゲーター」クラスでは、互いにロケ受け入れ実績を発表。海外撮影クルーが求めるコロナ対策などの事例を共有した。講師はロケ受け入れ実績を販促に活用する場合、事前に「権利処理確認書」を交わすことがポイントと解説した。
一方の「ロケエディター」クラスでは、シーン写真の使用交渉の場面を想定したロールプレイングを行った。受講者同士でこれまでの経験で得た知見などを共有した。
次回7月9日の会合では、今年初となる首長と制作者による商談会を実施する予定だ。
□大友監督が考えるロケ誘致に大事な要素 人との縁が決定打
協議会による事例発表の後、映画監督の大友啓史氏が登壇した。
同氏は、同協議会を通じた自治体や企業、製作者らの取り組みを評価する一方で、「縁やタイミングもあるので、ロケ誘致は難しい」と語り、そのための準備の大切さを強調。「即効性を求めるのではなく、地域のいいものを探し、磨き上げ、SNS(交流サイト)など通じ発信し続けるなど、継続することで結果が生まれていき、人との縁ができる」と持論を展開した。
これに加え、「ロケを誘致する側もドラマや映画に詳しくなり、同じ目線で作品を見てほしい」と思いを語った。
「選ばれるロケ地とは」という問いに対しては、「我われはその土地の人しか知らない穴場を見たいし、誰も見ていないシーンを見せたいと思っている。なので、地域のオンリーワンの形容詞があるかは大事。それに加え、その土地のことを極めている人を育ててほしい」と要望。
映画「るろうに剣心」シリーズの重要なシーンの多くを滋賀県で撮影したことに触れ、「大がかりな仕掛けを使った撮影などは受け入れてくださる人の協力が不可欠。最後の決定打は、やはり人の縁といいロケーションになる」とまとめた。