5月の宿泊業倒産は7件 14年ぶり負債1000億円超(東京商工リサーチ調べ)
2021年6月9日(水) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2021年5月の宿泊業倒産は7件(前年同月は10件)だった。1~5月の累計倒産件数は40件(前年同期は56件)。月平均8件の倒産が発生し、コロナ禍直前の19年(75件)を上回る勢いを見せている。負債総額は1022億2900万円(前年同月比1144・4%増)となり、14年ぶりに負債1000億円超の倒産が発生した影響で、負債総額を押し上げた。
宿泊業の5月の負債総額は1022億2900万円(前年同月は82億1500万円)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。新型コロナ関連倒産は3件(同8件)発生した。原因別として、販売不振が5件で7割を占めた。
地区別では関東が4件、東北と中部、九州で各1件となった。
おもな倒産事例として東京商事(東京都中央区)が4月22日(木)、東京地裁に特別清算開始決定を受けた。負債総額は1004億8300万円。
安達事業グループの中核企業として、リゾートホテルやゴルフ場、テーマパーク、スキー場、ブライダル施設、シティーホテル、カプセル&サウナ・スパなど、多くの施設を運営していた。1987年12月期には売上高約179億円を計上していたものの、一部のホテル運営をグループ会社に移管したことなどから、18年3月期には売上高が約50億4000万円に減少していた。
不動産取得やグループ企業向け貸付などに伴う大きな金融債務や、不良債権処理によって連続赤字を計上。18年3月30日に会社分割で新設した日本商事(東京都中央区)に事業を委託していた。20年11月30日に、株主総会で解散が決定された。
「海女料理」の宿を謳う民宿として1967年に開業した松浪(三重県鳥羽市)は、新鮮な魚介料理を提供する宿として人気を集めていた。96年には新たに「浜の雅亭一井」を開業するなど、ピーク時には8億円を超える売上高を上げていた。
しかし、同業他社の進出や長引く景気低迷などの影響で売上が停滞し、2016年には「松浪」を閉鎖。20年に入ると新型コロナの影響で業績が悪化し、売上高は約4億1200万円まで減少していた。先行きの見通しができないことから、21年5月10日(月)に民事再生法の適用を申請。負債総額は約12億1700万円だった。
旅行業の5月度の倒産は2件(前年同月はなし)だった。21年1~5月の累計倒産件数は14件(前年同期比7・6%減、前年同期は13件)で前年を上回って推移している。
負債総額は8200万円。2件共に負債1000万円以上5000万円未満で、平均負債額は4100万円に留まり、21年では最小額となった。