シリウム、航空市場を分析 需要回復は2024年以降と予測
2021年6月17日(木)配信
航空データの分析を行うシリウム(Cirium、英国)はこのほど、新型コロナウイルス禍での日本の旅客便や貨物便の運航状況を踏まえ、日本の航空会社の動向と需要回復を予測。2019年の世界の旅客数レベルにまで回復するのは24年以降と予測し、回復状況は各国で違うと明らかにした。
アジア担当コンサルタントのジョアナ・ルー氏は、今年も日本の国内線の座席提供数が激しく変動していると指摘。「4月は19年の70%、ゴールデンウイークは90%まで回復したが、最近のコロナ感染者数の急増によって、5月19日時点で25%以下まで減少している」と説明した。
旅客数についても、他のアジア太平洋諸国の大型国内線市場と比べ、日本の回復が遅れていると述べた。回復状況について、ルー氏は「コロナの抑制状況や対策の成否で決まってくる。そのため、日本では旅客数が抑制される状況が続く」との見通しを示した。
この結果、国内便の市場が縮小傾向にあり、航空会社がそれに対応するため新たな戦略を採用し始めている。ビジネスよりもレジャーの旅客が早く回復すると見込まれることから、「JAL(日本航空)やANA(全日本空輸)がLCCとの関係を強化する戦略に打って出ている」と語った。
□単通路機は稼働が安定、双通路機は新型移行へ
座席提供数の減少で運航機数も縮小しているなか、ワイドボディ(双通路)機と比較して、ナローボディ(単通路)機の方がコロナの影響を受けにくいと説明。稼働率についても、比較的安定していると語った。
とくに20年は、ワイドボディ機の長距離輸送が激減したことで運航停止の対象となり、21年に入ってから大量のボーイング777が運航停止・駐機状態となった。コロナ禍以降、全般的に稼働率が低下し、とくに大手航空会社の老朽化したワイドボディ機の稼働率が顕著に下がっている。結果として、ワイドボディ機の老朽機を新たな新機材タイプへ置き換える動きがみられているという。
現在のワイドボディ機は、このような需要の減少によって航空機価値が下落し、供給過剰状態のため資産価値も下がっている。一方で貨物輸送機は、貨物輸送量が今後も増大する見込みのため、その価値が高まる傾向にあると述べた。
なお、コロナ禍で増加した日本の航空貨物需要は、外資系貨物航空会社が需要に合わせて輸送量を増やして対応。日系貨物航空会社の輸送量は、19年とほぼ同等レベルだったと振り返った。
□将来の需要回復を予測、アジアは24年5月ごろ
シリウムでは将来のトレンドを見据えるため、コンサルタントチームがコロナ禍以降の回復シナリオをたてている。19年時の需要までの回復は、少なくとも2年ほどかかり、回復速度は地域により異なると予測。現在の市場状況に近いシナリオの場合、アジア太平洋地域は24年5月ごろに、世界的には同年8月ごろに回復すると見ている。