21年版観光白書 Go Toなどの施策を振り返る
2021年6月18日(金) 配信
政府は6月15日(火)、2021年版の観光白書を閣議決定した。同書は4部構成。観光立国推進基本法に基づいて、毎年国会に提出している。21年版では、例年通り国内外の観光の動向を掲載するほか、新型コロナウイルスが観光にもたらした影響を幅広い観点から分析。また、20年度の施策の振り返りや、観光のトレンドの変化、日本の観光の特性と課題点、観光立国の実現に向けた具体策──などを報告している。
□Go To実績、5000億円の支援
政府は20年度中、新型コロナの感染拡大防止策の徹底と共に、Go Toトラベル事業などの需要喚起策の推進を行った。この結果、20年11月にかけて国内旅行の需要が回復した。しかし、12月に再び感染拡大が起こり緊急事態宣言を発令したことで、全国一律で事業を一時停止し、需要は再び減少した。
同事業の利用人泊数は約8781万人泊、支援額は約5399億円だった。Go Toを利用した宿泊旅行の平均泊数は約1・35泊で、1泊での利用が最も多かった(約8割)。1泊当たりの利用価格は「5000円以上1万円未満」が最多で、次いで「5000円未満」が多いことから、比較的低価格帯で利用された。
また、国内旅行者の約67%が事業を利用したと回答した。
□コロナで観光のトレンドが変化
観光のトレンドの変化として、国内旅行では県内や近隣地域内での観光の割合が増加し、マイクロツーリズムが浸透した。旅行の同行者については、「夫婦・パートナー」の割合が増加する一方で、「友人」が減少した。旅行形態では「個人旅行」が増えてきていると報告した。
人ごみなどの3密を回避したい思いから、アウトドアが人気を集めた。また、新しい旅のスタイルとして、滞在型観光や分散型旅行などを、旅行会社・交通事業者と連携して促進している宿泊施設も見られる。
コロナ禍でテレワークが普及した影響で、「ワーケーション」の周知が広まった。とくに20代から30代からの実施希望率が高い。受け入れ側の地方や宿泊施設などは、施設の整備やコンテンツの造成を行っている。
□日本の観光を分析、課題解決を目指す
政府は、日本の国内旅行の特徴として、宿泊日数の短さや、月別旅行消費額に偏りがあることなどを挙げた。加えて、宿泊業の労働生産性や年間賃金が、全産業の平均に比べ低いことも指摘。宿泊業や飲食サービス業の入職率と離職率が、他産業に比べて高かった。
これらの課題を解決するため、観光業の体質強化と、魅力向上やデジタルトランスフォーメーションなどを目的とした観光地の再生に向けた取り組みを行った。
21年度は、事業の継続や雇用の維持への支援を行い、国内需要喚起に取り組む予定だ。また、魅力的なコンテンツの造成や、訪日外国人観光客の受入環境整備に力を入れ、インバウンドの段階的復活に向け準備を進める。
□国内外の観光動向、全部門で大幅減へ
国連世界観光機関(UNWTO)の調査では、20年の国際観光客は前年比73・1%減の3億9400万人だった。うち、訪日外国人旅行者数は412万人で、同87・1%減と大幅に減少した。訪日外国人旅行消費額(試算値)は同84・5%減の7446億円だった。
日本人の国内宿泊延べ人数は同48・4%減の1億6070万人、日帰り旅行は同51・8%減の1億3271万人となった。日本人国内旅行消費額は、同54・5%減の10兆円だった。うち、宿泊旅行は7・8兆円、日帰り旅行は2・2兆円と、どちらも前年から5割減となった。
また、日本の観光動向(宿泊旅行)として、20年は客室稼働率が34・6%となり、前年から28・1㌽減に落ち込んだ。シティホテルや、ビジネスホテルの客室稼働率は相対的に高い水準となったが、旅館やリゾートホテルよりも前年比の落ち込み幅が大きかった。