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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(126) 利用者の一日を守るタクシー運転手の行動 朝から気分を最幸に

2021年7月1日(木) 配信

 

 出張の朝、空港までタクシーを予約することがよくあります。マンションの出入口には20㍍ほどのアプローチがあり、タクシーはその外で待機しています。その日はタクシーがマンション住民の出入りをふさぐように、アプローチの正面に停車していました。住民も迷惑そうでしたが、運転手は席からそれを見ているだけでした。
 
 私が予約客だと分かると、彼は笑顔で声を掛けドアを開けましたが、その音が住民にも聞こえて振り返られてしまいました。その気まずさは、今も忘れることができません。運転手へ注意をしましたが、その後に同様のことが何度かあり、現在はそのタクシー会社は利用していません。お客様を待つ立ち姿でも、「誰がこんなタクシーに乗るのだろう」と思うようなタクシーを利用するときは、恥ずかしい思いをします。

 一方で、お客様の到着を、雨の日でも傘を差して待っていてくれる運転手もいます。タクシーに乗り込むときには、傘を差しかけてくれます。傘をたたみ乗り込むときが一番濡れるので、非常にうれしい対応です。

 ある日、予約したタクシーの運転手は、アプローチを歩いてマンションの玄関で待っていてくれました。目が合うと「ご予約をいただいた西川様ですか」と聞かれ、「そうです」と答えて傘を差そうとしたら、「傘が濡れますので、よろしければこちらでどうぞ」と運転手が持って来た傘を差し掛けてくれたのです。このおもてなし行動のすばらしさの本質は、どこにあるのでしょうか。

 私はこれから空港に行き、航空機に乗って出張先に向かいます。エントランスからタクシーまでのわずかな距離でも、持っていた傘を使えば、当然ながら傘は濡れます。小さな折りたたみ傘ではありますが、濡れたらカバンに仕舞うことができません。つまり、濡れた傘を持って飛行機に乗らなくてはならないのです。

 出張が雨で嫌なのは、雨の中を歩くだけでなく、実はその後の濡れた傘の扱いに苦慮することです。小さな行動ではありますが、運転手の行動はその日一日の私の気分を最幸のものにしてくれたのです。

 これから仕事に向かう者にとっては、朝から嫌な想いはしたくないものです。気分の悪い想いをすると、気持ちが落ち込んでしまいます。逆に、元気をもらえたら、「その日の仕事は上手く行く」といった気分にさせてくれるものです。

 旅館にとって、朝はお客様の出発が重なる忙しい時間帯です。チェックアウトに時間が掛かってしまうと、その日の楽しい時間を台無しにしてしまうことにもなります。お客様の大切な一日を守る、朝の行動を見直してみましょう。

 
 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

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「「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(126) 利用者の一日を守るタクシー運転手の行動 朝から気分を最幸に」への1件のフィードバック

  1. 濡れた傘をしまうビニール袋一枚があれば済むことです。

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