【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その3- 池上本門寺とお堂めぐり(東京都大田区) 小さな修行で「除災招福」 心身を整える歩行禅
2021年7月4日(日) 配信
コロナ禍のなか、ストレスケアとして、ぜひ行っていただきたいのが「歩行禅」です。歩行禅とは、仏教の立派な修行の一つでもあり、お坊さんも行っている行。これは、ただひたすら黙って歩くことであり、歩きながら座禅をしているのと同じです。
巡礼というのは、長い道でも短い道であっても、一旦死んだようにその道に入り、生まれ変わって、生き直すことでもあると思います。その巡礼のなかで、反省すべきこと、感謝すべきこと、今後の人生プランなどを思い巡らすことで、人生の不調を好調に変えていくことになるでしょう。
ストレスが溜まったら、近場の巡礼地でもいいので、歩行禅を行うようにしていくと、心が晴れやかになり、生きる力も湧いてきます。
神社仏閣めぐりというのは、小さな修行であるともいいます。小さな修行の積み重ねが、ご自身の中の精神性に磨きがかかり、いつの間にか、災いをはねのけて福を招くという「除災招福」を手にするのでしょう。
さて、今回は東京都大田区の池上本門寺とお堂めぐり。池上本門寺は、日蓮宗の大本山であり、日蓮聖人入滅の霊場。命日の10月に行われるお会式には、全国から参拝者が訪れます。日蓮聖人は、あの世での幸福よりも、今現在、この世での人々の幸福を重んじました。法華経を信じることにより、神々のご加護をいただいて、現世利益を受け取るというのです。
日蓮聖人の教えは、コロナ禍の厳しい時代のなかで、困難を乗り越えて、安穏な境地へと導く知恵を授けてくれるのではないでしょうか。
その日蓮聖人の精神性や思想に触れることができる場所が、池上本門寺。東急池上線・池上駅から徒歩10分程度で到着。池上駅を下車して、池上本門寺通りを歩くと、雲山堂という仏具屋さんと出会えます。そこはかとなく漂う上品なお線香の香りに、引き寄せられます。「先祖供養」「南無妙法蓮華経」などの文字が出てくるお線香が販売されているので、お土産にもおすすめ。近くには、お洒落なカフェや、くず餅のある甘味処もあり、参拝後のお楽しみに最適です。
さて、江戸の元禄年間に建造されて、歌川広重の「江戸百景」にも描かれた趣がある総門に入ると、豊かな緑に囲まれた、加藤清正が寄進したという96段の此経難持坂という石段の坂を上ります。仁王門をくぐると、なんともいえない清澄な空気感が漂う、静謐な心地良い大堂にて、まずお参りします。
そして、お堂めぐりの開始。まず、大堂近くの日朝聖人像を奉安している日朝堂へ。眼病治癒や学力向上に良いとのこと。仁王門を出て、長栄堂へ。池上本門寺の守護神として「長栄大威徳天」を奉安。池上本門寺には、神仏習合の形として18におよぶ神々が勧請されています。
長栄堂の近くには、加藤清正の供養塔、力道山、市川雷蔵、狩野探幽、幸田露伴、紀州徳川家に縁のある人々など有名人のお墓もあります。
そのお墓を通り抜けていくと、妙見菩薩が奉安されている妙見堂へ。妙見菩薩とは、北斗七星を神格化した菩薩であり、災難を除去し、人の寿命を延ばす福徳があるそうです。日蓮宗や密教系のお寺で祀られることが多いとのこと。あの葛飾北斎も、熱心な妙見信仰信者であったといわれ、才能強化の力が授かるよう、祈られたのでしょう。
旅の最後は、総門近くに戻り、観音堂と鬼子母神堂へ。慈悲深い観音堂にて、思いやりある心を磨けるようお祈りすると、自分自身が穏やかな境地に。そして、鬼子母神堂では、子授け・安産・子育てにご利益があるので、母性愛を育めるよう祈願するといいでしょう。
七福神めぐりもできるので、別の機会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
■旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。