〈旬刊旅行新聞8月1日号コラム〉「Ovni」紙の記事から――フランスも「コロナ後の働き方」模索
2021年8月2日(月) 配信
数年前、パリのとある安ホテルに8日間ほど滞在した。朝食は毎日、わずかなアレンジもなくまったく同じだった。その潔さに感服したわけだが、1階ロビー奥にある朝食会場の入口でトレイを手に持ち、歩を進めると、いつもの位置にクロワッサンと、歯ごたえのあるパンが主食として陣取る。その横でバター、ジャムなどが選べる。オレンジと、まだ青いリンゴが山ほどワゴンに積まれ、ダノンの定番ヨーグルトが1種類。あとは卵。私のトレイの中は毎朝同じ。昼食、夕食は街のレストランに入ったりもするが、肉料理やパンがメインとなるため、次第にご飯が食べたくなる。
そうすると、ほぼすべての世界の主要都市に存在する中華街が助け舟になり、自然と足が向く。だが、その中華料理も美味しいのだが、和食に慣れ親しんだ身としては何日間も続くと、胃もたれを起こし始める。異国の文字が並ぶ街並みから、日本語で書かれた和食の看板を無意識のうちに探すようになる。
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パリのオペラ座近くに日本料理店が多く建ち並ぶ地区がある。足繁く通っていると、店内に「Ovni(オブニー・パリの新聞)」と書かれたタブロイド紙を目にする。注文して料理が来るまでの間、日本語にも飢えた状態で、手にして読み耽る。パリの流行など最新情報が掲載されているほか、求人やイベント、不動産などの掲示板コーナーもあり、現地に住んでいるような感覚にもなる。フリーペーパーなので気に入って1部、日本に持って帰った。
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「Ovni」紙を発行する会社は「ZOOM JAPON」誌を発行している。当時は知らなかったが、それから間もなくして、偶然も重なり、本紙「旅行新聞」と提携関係を結ぶこととなった。
「ZOOM JAPON」誌の内容は本紙21日号で毎月、特集の一部や、フランスの現地のようすなどを紹介している。同誌の日本窓口となっている「さえら」(京都市)代表の樫尾岳氏を介して、さまざまな情報を提供している。
日本の映画、文学、漫画、音楽などのカルチャーに加え、政治、経済などを深堀りする特集に惹きつけられる人も多い。本紙にも「どうしたら入手できるのか」との問い合わせが多く寄せられる。
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提携紙としての特権でもあるが、「Ovni」紙(毎月1日・15日発行)がフランスから旅行新聞にも送られてくる。
今、手元にある7月1日号では、「原則100%テレワークから、ハイブリッド方式へ」との見出しの記事に目が留まった。
同誌によると、フランスでは6月9日に、テレワークが可能な職種における原則100%のテレワーク規則が終了した。ボルヌ労働相は当面は週に3日テレワーク、2日出勤というハイブリッド方式を政府方針の指標とし、各企業で労使交渉によりテレワークの週最低日数を決めるように促しているという。
「コロナ収束後もテレワークを続けたい」「通勤時間が省けるため仕事の効率がいい」「もう以前の働き方に戻りたくない」などの意見が錯綜し、フランス国中で「コロナ後の働き方」を模索しているようすが伝わってくる。
フランスの方が少し先行しているが、日本もいずれ同様な議論が沸き起こることが予想される。
(編集長・増田 剛)