送り手と受け手が連携 コロナ後に向けワーケーション推進セミナー開く(運輸総合研究所)
2021年8月4日(水) 配信
運輸総合研究所(宿利正史会長)は7月30日(金)、「ワーケーション~働き方と地域活性化~」をテーマにオンラインセミナーを開いた。送り手側である企業でのワーケーションへの取り組みや、受け手側の地域における取り組みを紹介した。また、アフターコロナによる価値観の変容を踏まえた、これからのワークスタイル・ライフスタイルのあり方について講演を行った。
はじめに、関西大学社会学部教授の松下慶太氏が、「アフターコロナのワークプレイス、ワークスタイル」について講演を行った。
自発的な活動として、ワーカーがワーケーションという働き方を選択する欧米型ワーケーションとは違い、日本型ワーケーションは、企業や地域が推進するライフスタイル・ワークスタイルを行うため社員として制度を利用するカタチである。
企業と地域との連携を密にすることで、「世界とは異なる日本型ワーケーションを作っていくことができる」と松下氏は語った。
また、今までの観光資源は1~2日で経験できる、よく知られた名物や名所であるとして、「一次的な観光資源」と位置付けた。
一方で、「ワーケーションを行うと、滞在期間が3~4日から長期間、複数回に渡るため、「二次的」「n次的」な観光資源が必要だと主張した。長期間かつ複数回に渡りその地域に訪れたときに活動することや経験したいものを地域で作り上げれば、新たな観光資源である「ワーケーション資源」が生まれる。
日本航空(JAL)人財本部人財戦略部アシスタントマネジャーの東原祥匡氏は、同社のワーケーションへの取り組みについて紹介した。
JALでは2017年に、休暇取得の実現のためのワーケーションを導入した。19年には出張時に休暇がつけられるブリジャーも導入した。
社内や社会全体にワーケーションを浸透させるため、導入初期から浸透施策も行った。ツアーや実証実験など社員参加型企画のほか、JTBなど他の企業と一緒にワーケーションツアーの販売も行った。
同社では、21~25年度中期経営計画に、「地方移住やワーケーションの普及促進」を盛り込んでいる。「新たな人の流れを生み出すことにより、今後の交通事業者の新たなビジネスモデルを構築する」(東原氏)ことを目標としている。
一方、地域での取り組みとして、南紀白浜エアポート社長の岡田信一郎氏が「空港型地方創生の取り組み」について話した。
ワーケーションの先進県でもある和歌山県の玄関口として知られる南紀白浜空港。旅行会社でもあり、ワーケーションに関して県の「総合コンシェルジュ」に登録している同社では、官民が連携して誘致を行っている。
21年には副業支援のみらいワークス(岡本祥治社長)と提携し、都市部の人材を和歌山に呼び込み、関係人口創出と、地域企業の生産性や活性化を目指す。
施設側の取り組みとして、軽井沢プリンスホテル執行役員兼マーケティング部長兼海外事業部長の赤松衛一氏が「参加・共創型ワーケーション」を紹介した。
新たな市場であるワーケーションの潜在ニーズを発見するために、個人・法人・地域の3者に、実際体験してもらい、講演会に参加してもらうなど、積極的なヒアリングやアプローチを行った。
それぞれの視点から見えてきた課題を元に、「ワーク環境の整備」や「バケーション要素の充実」をはかり、地域事業者と法人が連携したボランティアコンテンツを取り入れている。