宿泊業1~7月倒産動向 49件のうちコロナ倒産が過半数 東京商工リサーチ
2021年8月13日(金) 配信
東京商工リサーチはこのほど、2021年1~7月の「宿泊業の倒産動向」調査内容を発表した。宿泊業の倒産は累計49件(前年同期比37・9%減)と、前年同期の79件から大幅に減少した。一方で、このうち新型コロナ関連倒産は27件と過半数を占めた。同社は「コロナ禍が長引き、宿泊業の疲弊が高まっている。自治体も参加した弾力的な支援策が求められる」と警鐘を鳴らした。
□宿泊業の倒産動向
1~7月期の宿泊業倒産の負債総額は、1203億3600万円(前年同期比173・2%増)で、2年ぶりに前年を上回った。5月に特別清算した東京商事(東京都中央区)が負債総額1004億8300万円と、14年ぶりの負債1000億円超えの大型倒産となり、全体を押し上げた。
新型コロナ感染拡大の影響に関係する倒産は27件(構成比55・1%)だった。月別の構成比は、新型コロナ感染が広がり始めた20年4月に60%、5月には80%にのぼった。その後は落ち着きを見せていたものの、21年5月から急上昇し、7月は83・3%を占めた。
同社は前年から続く新型コロナ禍について、「インバウンド需要が消失し、国内では緊急事態宣言の相次ぐ発令などで、人流が大幅に制限された」と振り返る。20年7月にはGo Toトラベル事業が開始されたが、新型コロナ感染の第3波により11月には一時停止し、今でも再開の見込みは立っていない。
政府や金融機関の支援効果で、20年後半以降の倒産は抑え込まれている。しかし、「コロナ慣れや自粛疲れも広がり、宣言発令などがあるにも関わらず、感染者数は8月に入り急増している」(同社)。
「観光業界の業況回復見通しは未だ不透明。周辺地域を巻き込んだ集客策や、業界の事業構造の転換が求められる」と調査をまとめた。
□旅行業の倒産動向
1~7月の旅行業倒産は累計19件(同11・7%増)で、3年連続で前年同期を上回った。このうち、新型コロナ関連倒産が17件と9割を占めた。
新型コロナ関連倒産が初めて確認された20年2月から12月までの旅行業倒産は23件だったが、新型コロナの影響を一因とする倒産は7件で、3割程度にとどまっていた。
負債総額は18億4700万円(同93・6%減)で2年ぶりに前年同期を下回った。20年6月に発生したホワイト・ベアーファミリー(大阪府大阪市)の負債278億円の大型倒産が反動減となった。
1~7月の旅行業の倒産について、同社は「資金繰り支援策で記録的な低水準に抑えられた」と振り返る。一方で、「売り上げが回復しないままの支援効果にも息切れが見られ、21年は増勢を強めている」と指摘。
「現在のペースで推移すると、年間倒産は前年を上回る可能性が高まる」と懸念を示した。