「井川今日子のおもてなし接客術(50)」 コミュニケーションスキルを磨こう
2021年9月5日(日) 配信
今年、新入社員研修を担当した旅館でフォロー研修をするため、約3カ月間現場で働いての感想や課題などをヒアリングする事前アンケートを実施しました。すると、回答者全員が、コミュニケーションに苦手意識があることが判りました。
お客様が接客の良し悪しを判断するのは、そつのない対応よりも気持ちの良い会話ができたかどうかです。
すなわち、コミュニケーションの出来不出来が、接客評価に大きく関わるため、今のうちにこの苦手意識を取り除く必要がありました。
コミュニケーションには受信側と発信側があり、旅館のスタッフはこの両方のスキルを上達させる必要があります。
まず【受信側】のポイントは、①お客様がとにかく気持ち良く話ができる環境を整える②お客様に興味・関心を見せる③受信するだけでなく発信もすること。
次に【発信側】のポイントは、①価値のある情報提供をする②お客様が喜ぶ情報か判断する③質問を良く理解し、正確な回答をすること。
とくに気を付けたいものが2点あります。1つが【受信側】の③です。「受信するだけでなく発信もすること」では、受信だけで終わってしまうと、会話を拒否しているのと変わらないという点です。
例えば、お客様に「売店は何時から営業していますか」と聞かれて、スタッフが「〇時からです」とだけ返すと、そこで会話が終わってしまい〝この人は私と会話をしたくないのかな〟とさえ思われてしまうことがあります。
これを「〇時からです」+「ただ今のお勧め商品は〇〇ですので、是非ご覧下さい」などと受信に発信を付け加えると、話が途切れることなく続きます。
次に【発信側】③の「質問を良く理解し、正確な回答をすること」は、質問を歪めて回答をしていないか、という点です。
たとえば、お客様に「おすすめのお店はどこですか」と聞かれて、「当館から一番近いのは……」と、ちぐはぐな対応をしてしまう人が少なくありません。
お客様の質問を正しく受け止められていれば、このような回答にはならないはずです。
今回紹介した事例はごく一部ですが、このようにコミュニケーションを上達させるテクニックはたくさんあります。
しかしながら、結局は知識と情報が無ければ、会話は弾まないというのが大前提です。テクニックだけでは、会話を広げることはできません。知識や情報をたくさん持っていれば、会話の守備範囲が広くなり、自ら会話を展開したくなります。
今回の研修では、実践練習を通じて知識と情報を習得して、アウトプットする場を設けました。コミュニケーションを上達させるには会話技法だけではなく、この点を肝に銘じることが大切です。
おもてなしコンサルタント 井川 今日子 氏
大学で観光学を学んだ後、船井総合研究所を経て、10年に観光文化研究所入社。全国の旅館や観光協会を中心に、女性の感性を活かした集客・固定客化支援で活躍中。商品戦略や販売促進、現場接客サービスなど多岐にわたり提案。